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2014'10.15 (Wed)

「君の名は」(プチオンリー ペーパー)

こんばんは。
先日の戦利品はまだカバンの中、の英香です。
くそう、開けるタイミングがないではないか!お使い物もあるのにスマヌ(>人<;)です。
そういえば先日初Suicaを使ったと書きましたが、普段の生活では使わないのでチャージはせず、最後は不足金を支払う精算の形をとりました。
が 機械が止まってしまい、「係員が伺います 云々」と表示が。てっきり改札あたりから駅員さんがやってくるかと思ったら、券売機横の丸い窓からおっちゃんが顔見せて声をかけられました。超ビックリしましたよ!大声出ちゃいました。心臓に悪い |゚Д゚)))。

更新です。元々10月4日にアップする予定だったのをプチオンリーの手土産用にとしたので、ちょっと日がズレております。出会いの日に因んでってだけですが。
あと、前日に思い立って書いたおまけの四コマ漫画もあったりしますが、どうやろうかと思案中。こちらもアップした方がいいかしら?。試行錯誤してます。
恋人期間中です。
↓こちらからどうぞ。

【More】

「君の名は」


倒れる!
そう思った時に背中を抱きとめてくれる存在がある。


利用者からの不審者情報を受け、堂上班で張り込みをしていた。
男が専門書架奥で隠れるようにしてリュックに本を詰め込んでいたところを バディを組む郁と手塚が職務質問をかけると、男は突然逃走した。控えていた堂上と小牧も駆けつける。
男は閲覧用の机をジグザグに抜け、利用者をかき分け 闇雲に走り廊下を目指す。手塚は巧みに机を乗り越え先回りをし、郁は男の注意を引きながら間合いを詰めていく。
手塚との距離を測り、郁は男のリュックに手を伸ばして捉えた。中指に引っ掛かればこちらのもの。ぐっと掴んで男のバランスを崩した。
すると男は素早くリュックの肩紐を外して 郁の手を外そうと振り回した。郁は強く掴んでおり、中途半端に開いていたチャックから本が飛び出してきた。男は諦めたのか、「チッ」と舌打ちすると急に手を離して走り出した。
「わっ!」
郁はバランスを崩してリュックと共に後ろに大きく傾いていった。視界の先に手塚が男を取り押さえるのが見えた。
「!」
勢いよく尻餅をつく直前に支えが入る。もう何度となく受ける柔らかい衝撃は確認するまでもなく 堂上のもの。郁の体をがっしりとした腕で受け止めて 厚い胸におさめてくれる。
「あほう、無理するな。あの間合いなら男の隙を一瞬作れば 十分手塚が仕留める。」
「スミマセン、ついムキになっちゃいました。」
放り出された本を離したくなくて。
郁は手元に落ちているリュックを手繰り寄せた。本は無事だ。ほう、と息をついた。
「ま、よくやった。ほら。」
目の前のことに全力投球な部下だ。状況を見てのコンビネーションは取れてきたが、脊髄反射は相変わらず。そこに助けられることも多いのだから 何かあったら自分がフォローすればいい。これが郁の良さなのだから──堂上はくしゃりと郁の髪を撫で先に立ち上がると手を差し出した。
郁はリュックを抱えて体勢を整える為に足を動かした。
「っ・・・!」
足首に痛みが走った。
「捻ったのか。」
堂上は跪いて郁の足を検分した。右足首に触れると郁の顔が歪む。
「結構派手に振り回されたからね。医務室に連れて行ってあげなよ。」
小牧がひょいとリュックを取り上げる。手塚は男を後ろ手に捻りあげて引っ立てていた。
「後は俺達でやっておくから。」
小牧は手塚とともに男を防衛部に連行していった。

「立てるか?」
差し出された手に甘えることにして何とか立ち上がったが、右足をついた段階でツキンとした痛みに思わず首を竦めた。
だめだ、心配かけちゃう。
郁は努めて笑顔を作った。
「平気で・・・」
するといきなり足を掬われるようにして、ふわりと身体が宙を浮いた。
「わっ!?」
思わずしがみついてから自分の状況を理解した。堂上に横抱きに抱え上げられているのだ。いわゆるお姫様だっこ。
「ちょ、教官!自分で歩けます。」
と訴えたが、堂上の顔が近すぎて思わず声を失った。
何を今更、とは思う。キスだって何度もしてるのに いつまで経っても不意にドキドキが襲ってくる。
「こら、大人しくしてろ。足はお前の武器だろが、黙って運ばれとけ。」
「だ、だって 恥ずかしいです。」
「医務室はすぐそこだ。誰も見とらん。」
堂上は軽々と運ぶ。こんな大女を抱きかかえても安定した移動が出来る逞しさは流石だ。郁は遠慮がちに身を任せた。


医務室に医師は不在だった。堂上は処置用の丸椅子に郁を降ろすと、備え付けの棚を物色する。簡易の救急箱を取り出し テーブルに置いて蓋を開ければとりあえずの一式が揃っていた。手際よく処置の準備をした。

堂上は郁の前に膝をつくと、郁の靴を脱がせ始めた。
「わ、教官!結構です!」
郁の抗議にお構いなく 堂上は靴下まで脱がせると、改めて患部を確かめる。
「む、腫れてきたか。」
軽く外くるぶしの下周辺を押さえて郁の表情を下から覗く。
動かせない、ほどではない。力を加えなければ鈍い痛みを感じる程度。骨には異常なさそうだ。
氷のうをあててアイシングした後に湿布を貼り、少々圧迫気味に包帯を巻く。
怪我の多い職種だ。この手の処置は心得ている。
堂上の武骨な手は意外とやさしい。
拳骨やビンタは容赦なく痛いのだが、触れる仕草は柔らかい。厚みのある分なのか、気持ちいい・・・
だなんて!
ぼーと眺めていた郁の頬は 一気に赤みがさした。
「よし、出来上がりだ。」
固定し終わった足をペちんと叩く。
「ぎゃ、痛いです!」
ひー と竦み上がる郁を一笑すると、堂上はくるりと背を向けて道具を仕舞い始めた。

ぷっと膨れた郁だったが、作業している堂上の背中を見ているうちに 既視感を覚えた。
そうだ。初めて出会った茨城の書店で、足を怪我してこうして椅子に座った状態で眺めた背中。
良化隊の検閲は 威圧的で酷く冷たく、手荒に放り込まれた本はコンテナの中で傷み 乱雑に積まれていった。恐怖と悲しみと悔しさと。抗っても圧倒的に弱者でしかない自分を颯爽と助けてくれた 正義の味方。
顔も名前も分からず、勝手に王子様と憧れて追い続けた図書隊員だ。
今では 堂上篤という、強く逞しく 厳しくも─甘い・・・1人の男性だと知っている。想いが繋がって 更に特別になった、大切であたたかいその存在。

自分が図書隊員──図書防衛員を目指すきっかけを与えられたあの日の出来事は、何度も繰り返し夢に見た。
あの時どうして、名前を訊かなかったのだろう。どうして何も伝えなかったのだろう。そしたらもっと早く会えたのに。そしたらすぐにお礼も言えたのに───
でも、今と違う運命になってたら怖い。今がとても幸せだから。今が夢みたいにふわふわしてるから。
郁はぐるぐると想いを廻らした。

ポン、と 優しい手が頭を叩く。
「どうした、痛むか?」
その声に顔を上げたことで、自分が俯いていた事に気が付いた。
「っ・・・いいえ。」
ふるふると郁は首を振る。不意に感傷的になっただけ。何を今更。ここに教官はいるじゃない。
にっこり笑って妙な考えを振り切った。
「・・・そうか。」
頭に乗せた手は、いつもより長く郁の髪を掻き混ぜる。


「暫く休んどけ。ちょっと小牧のところへ行ってくる。歩き回るなよ、悪化したら公衆の面前で運ぶことになるぞ。」
悪戯な表情を見せるのは2人きりの時だけ。この破壊力は郁には絶大だ。
堂上は医務室のドアノブに手をかけた。
「あ・・・」
つい郁は呼び止めようとした。
「ん?」
振り向いた堂上に何を言おうとしたのか。
「いえ、何でもないです。」
肩を竦めて 郁は言葉を飲み込んだ。
「「・・・・」」
暫しの沈黙の後、堂上が口を開いた。

「君の名は?・・・」
その言葉に郁は はっと堂上の顔を見た。いつになく 優しげな堂上の顔。郁の胸はドキリとはねた。
「あの時 郁の名前を訊いてたらどうなってただろうな。」
あの時。
きっと思い浮かべた「あの時」は同じ場面。今のこの光景に同じ事を連想したのか。郁の胸に湧き上がる嬉しさを、この人は気付いてくれるだろうか。
「あたしも、あの時教官の名前を訊いてたならって、考えてました。」
散々本人の前でボヤいていたが。
この人も同じように逢いたいと思ってくれていたんだろうか。・・・そんな都合のよい想像はつきにくいが、ちらっとでもそう思ってくれていたらよかったな。と一方的に追いかけてきた事実に苦笑する。
いつか、訊いてみようか。あなたの心にあたしが住んでいましたか?

「お名前、教えて下さい。」
「堂上 篤、だ。」
心地良い響きに胸がいっぱいになる。
「君の名は?」
「笠原郁です!」
郁の元気な声に 堂上の口元が綻んだ。
「・・・知ってる。」
今ではまるであの時から互いの名前を知っていたかのようだ。
いつ名前を知ったとかは関係ない。今、確実にあの時から繋がっているのだから。

郁に歩み寄った堂上が、屈んで互いの額をくっつける。
「・・・自分だけ、とか 思うなよ。」
え?と視線を上げれば、めいっぱいの大好きな存在が。郁の唇に吐息が触れた。

「おっと、取り込み中?」
ガチャリと戸を開けて1歩足を踏み入れてきたのは小牧だった。
「・・・」
盛大に眉間の皺を寄せた堂上が小牧を振り向く。
「あ、ごゆっくりー。」
開けた戸をそのまま閉めようとそのままバックするニヤニヤ顔の小牧がいた。
「今そっちに行くところだった!」
ズカズカと小牧の横を通り過ぎて廊下に出ていく堂上を、郁は真っ赤になって見送った。
「ごめんよ 笠原さん。あ、調書は手塚と取ったから、このまま業務終了でいいよ。堂上が迎えに来るまで 休んでて。」
小牧は郁に向かって片手で謝る仕草をしてから堂上を追って出た。ドアが閉まれば廊下の先で賑やかなやり取りが行われているのが漏れ聞こえる。小牧が盛大にからっているのだろう。
1人残された郁は目を閉じた。

あの時訊けなかった名前は 堂上篤。
伝えられなかった名前は 笠原郁。
重なる未来をまだ知らずにいた、それは始まりの───



00:42  |  図書戦  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2014年10月15日(水) 09:23 |  | コメント編集

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 | 2014年10月15日(水) 10:07 |  | コメント編集

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