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2014'10.20 (Mon)

「誓いの道は」9

こんにちは。遅刻魔の英香です。
昨日は堂郁の日。なんか当然のように記念日でしたが、間に合わず(笑)。
遅れないように なんて、ちょっと早めにお話妄想。ワンコの散歩中に筋書きを粗方決めて、今回自信満々に「絶対に忘れないな♪」なんて脳に刻み込んだ覚えがあります。うん、芝生の見事なお家の 隣の畑をながめていた時に刻み込んだんですよ。
しかしそのシチュは思い出せても、内容はすっかり抜け落ちてしまいました。←←
なんで毎度毎度 学習しないんですかね。何の片鱗も思い出せない_| ̄|○。
でも去年も遅刻してたし。どうやら記念日に創作するのが私のパターンなんですね。←

ということで、──通常更新です。
不定期連載の「誓いの道は」の続きになります。こちらはindex4にあります。
で、indexを弄るのに 「№106.108伝家の宝刀」をこの連載の8に組み込んじゃいます。こちらのこだわりの都合ですので、気にしないでください( ̄∇ ̄*)ゞ。

↓こちらからどうぞ。


【More】

「誓いの道は」9


結婚に向け準備を進めるにあたって 1番の懸念事項であった郁の両親(特に母親)への婚約の挨拶は、何とか無事に済んだ。思い掛けず 郁の兄達とも顔合わせが出来、一気に気が楽になった。
堂上家の方は、既に何度か2人で顔を出していることもあり、何となく承知はしているであろう。今では息子の帰省というより 郁の顔見たさに呼びつけていると言っても過言ではない。デートのついでに堂上家に寄るコースは何度も実践済みだ。
後は正式に報告するのみ。諸手をあげての歓迎は目に見えている、と思う。何せ危険な職種に理解ありすぎる嫁だ。何の申し分もない。


高校生の堂上篤は文武両道に秀で、自慢の息子だった。共働きの両親を助け、妹の静佳に振り回されながらも堅実に暮らしていた。
正義漢であるがゆえ 時折篤くなるが、小さい頃からの読書好きは母の教育の賜物か。看護師という職業柄 家を留守がちだった母は、時間の取れる限り 幼い息子に読み聞かせをするよう心掛けてくれた。母の膝の上に乗り、絵本から物語を。文字を覚えた幼き篤は そのうち妹の静佳に自ら読み上げる程になった。
「俺、図書大に行くよ。」
成長した篤にしたら自然の結論だった。
図書大学校は成立に関して黒い噂のある機関だ。しかし良化法に対抗できる唯一の機関でもある。本好きの母だけでなく、父も良化法の理不尽さに不信感は持っていた。
『図書館の自由法を守りたい』
その志に親として全力で応援したい。司書という将来の選択に反対はない。しかし息子の目指すものは戦闘職なのだ。
志を貫くために、本当に武力が必要なのか。身を危険に晒す息子の選択に苦悩しなかったわけではない。しかし そうでもしないと 自由が守れない時代に大人達がしてしまったのか。
息子が信じるモノを信じて送り出すしかなかったが、腕に覚えがあるだけに無茶をすること数回。

「堂上婦長、息子さん また負傷したようよ!。」
職場に別の病院から連絡が入ると サーと血の気が引く。慌ててかけつければ「戦闘職種だからこれくらいは覚悟のうえだよ。」とかえってくる。
普段穏やかな母も、この時ばかりは拳骨を落とす。
お前の無事を祈っている者として。いつかこの心境を味わう未来のパートナーの代わりに。

被弾して容態がよくない と連絡があったのは昨年の夏だった。
年の初めに難しい案件を抱えたらしいとは知っていたが、仕事の内容は家族にさえ守秘義務が発生する。テレビや雑誌の報道で察しはついていたが、連絡はお互いにとらなかった。
いきなり知らされた被弾の知らせ。医療関係者と知られている為、看護師から詳しい容態も伝えられた。
鍛え上げてあるからこそ繋ぎとめた命かもしれない。結果的に無事意識を取り戻したとの小牧からの連絡に安堵はしたが、将来 この心境に耐えられるパートナーが現れてくれるのだろうか。
1度だけ様子を見に行った。ICUで治療を受ける息子は疲労の色が見て取れた。
しかし、管に繋がれた腕の先には 握られた拳。
両親とは違う世界で闘っている息子に出来ることは祈るだけ。久しぶりに見た息子は 銃弾に倒れながらも負けじと闘っている。文句なら妹の静佳が怒鳴り込んで言うであろう。母は握られた拳にそっと手を置くにとどめた。


「ただいま。」
「お邪魔します。」
玄関から待ちに待った声がした。
両親が家に居るのを確認してから、篤が郁を連れて訪れたのだ。
「いらっしゃい。今日はすき焼きの用意が出来てるから、ゆっくりしていってね。」
「おや、鍋じゃなかったのかい?」
「あら、そうでしたっけ。いいお肉があったからすき焼きにしましょうよ。」
相変わらずののんびりテンポの両親に郁の表情は綻ぶ。篤と微笑み合う2人の雰囲気に堂上家の和やかな時間が流れた。
食事も進み、母親と郁の噛み合うような 噛み合わないないような、そんな会話を眺めていた篤が おもむろに居住まいを正した。郁にも緊張が走る。
「実は───」

「堂上さーん、こんばんはー。」
玄関で女性の声がして、母は「はいはいはい」と席を外して行った。
テンポの違う相手になかなかタイミングを合わせられない篤は 大きなため息をついて落胆した。
玄関には隣の奥さん。上がり框には大きな箱。
「田舎からリンゴが届いたんだけど 重なっちゃってね。貰ってくれない?」
たった今届いた箱ごと持ってきたのだという。
「あらあらあら、ありがとうねぇ。篤~。」
呼びつけられた篤が久しぶりに会う隣人に頭をさげて、ひょいとリンゴの箱を持ち上げた。
「あら、あっちゃん。元気そうね。大変なお仕事ご苦労様。たまには──あら。」
世間話を始めた奥さんが、篤の後ろに立つ郁に目を止めた。
「静ちゃんじゃないわよね。」
篤と郁を交互に見やる。
慌ててぺこりと頭を下げた郁を、母親はコロコロと笑いながら紹介した。
「篤のお嫁さんなのよ~。こんな可愛い子が来てくれることになってねぇ。」
「まぁー、そうなの おめでとう!。あっちゃん良かったわねぇ。これでお父さんとお母さんも安心だわ。」
は?
「ちょ、ちょっと待て。まだ俺は──」
あたふたする篤に 隣の奥さんは首を傾げた。
「あら、違うの?」
いつの間にやら父親も玄関に出てきていて、狭い玄関に勢揃いしている。
ニコニコしている母親に 箱をのぞき込む父親。郁は身の置きどころに困っているようにモジモジしている。
どうやら堂上家ではかしこまったタイミングははかれそうにない。篤は箱を下ろして軽く咳払いだけすると、郁の手を取って自分の隣に立たせた。
「俺達、結婚するよ。」
母親は頷き、父親は身を起こして目を細めた。
「そう。」「そうか。」
郁の手が、篤の手をキュッと握った。

隣の奥さんはご機嫌で帰っていった。
篤がキッチンまでリンゴの箱を運んでいくと、母親が郁に言った。
「郁ちゃん、このリンゴ 剥いてくれる?」
「はい。」
郁の返事に篤は些かおののいた。
「お おい、やめといた方がいいんじゃないか?」
いつかの心臓に悪い状況を思い出したのだ。
「大丈夫です。─多分。」
郁は母親からナイフを受け取ると、心配げな篤の前で 赤いりんごにナイフを入れた。
ゆっくりだがスルスルと剥いていく手元を、篤は初めは恐る恐る、やがては感心して見守る体勢になった。
入院していた時に 郁が指まで切って剥ききらずにガタガタだった赤い球体は、見事に芯まで切り欠いて皿に盛られた。
注目されながらの作業に肩の力が入っていた郁だったが、ほっと力を抜くと 上目遣いで篤の目を覗き込んだ。
「見事なもんだな。リンゴ相手に戦闘体勢とってた奴とは思えんほどだ。」
「柴崎から剥き方教わりました。なかなか合格点貰えなかったけど。」
肩を竦める郁に、母は微笑んだ。
「教官の入院中とか、あたしまだ剥けなかったんです。」
ここで取り繕うほどのスキルのない郁は、母親に正直に話した。
「篤の為に練習してくれたのね。」
「──っ」
母親の穏やかな言葉や雰囲気が郁の胸にじんわり染みる。
郁は正面から向き合うと、深く頭をさげた。
「ふ、ふつつかものですが、宜しくお願い致します。」
「郁ちゃん、ありがとう。篤は果報者ね。」

息子には 志を共にしている人がいる。
同じ世界で共に歩む人がいる。
共に無事を祈り 笑顔で迎えてくれる人がいる。
「貴女みたいな娘さんで良かったわ。」
「おーい、まだかーい?」
リビングから父親の声がする。
「はいはいはい。」
盛られたリンゴに楊枝を添えた。

堂上家の夜は賑やかだった。

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 | 2014年10月20日(月) 20:20 |  | コメント編集

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 | 2014年10月25日(土) 20:52 |  | コメント編集

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