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2012'11.06 (Tue)

「大切な」前編

おはようございます。英香です。
今日は天気悪そうです。こんな日は家でじっと――あ、買い物ですか。婆さんから出動要請です。村内には大型スーパーはなく、免許のない婆さんとはいつも一緒に買い物です。おかげでペーパードライバー返上で、今ではゴミ出しも車です。人間、変わるものですね。
さて更新です。カミツレデート前。我が家設定ではクリスマスに日程を決めた事にしてあるので その後位。そして初めての前後編です。長くなったので切っただけ。お付き合いお願いします。

↓こちらから どうぞ

【More】

「大切な」前編


郁には寝る前の習慣がある。
「んじゃ、柴崎。おやすみ~。」
カーテンを引いて布団に潜り込むと、枕元にある本に手を伸ばす。読むこともあるが 大抵表紙を撫でたり眺めたりしてから目を閉じる。茨城の本屋で良化隊の検閲に出くわし、図書隊三正の見計らいによって守られた本だ。
抱き締めるだけで 力が湧くような、暖かい気持ちになるような。大好きな物語であると同時に あの時の三正へ馳せる想いがそうさせるのか。王子様である三正が堂上と分かってからも、夜の習慣は変わらない。以前より触れている時間が長くなった。その理由は県展ではっきりしたばかりだ。
今日も1日の疲れを癒すべく手を伸ばす。
?。いつもの場所にない?。枕の下は?。ない。ガバッと起き上がり布団を引き剥がすがない。なんで?なんで?。
カーテン越しにバタバタし始めた郁に柴崎が声を掛けた。
「どうしたの?。明日は今年最後の訓練なんでしょ。早いとこ寝ないと 朝が辛いんじゃない?。」
「ないの!。どうしよう!。」
カーテンを勢いよく開けて 真っ青な顔でベッドから転がり出る。自分の机の上を探し、引き出しの中を探る。棚の中、ベッドの下、ゴミ箱、思い付く限りを探すが見当たらない。
「そういえば 夕飯食べに出る時―――。」
柴崎が半ベソの郁に言った。
「小野さんが 何か本がないかって聞きに来てたわね。」
そうだ。旅行に行くから道中で読む本を探しに来てた。適当に物色してって お腹空いてたからそのまま食堂に行ったんだった。
慌てて小野の部屋まで行き戸を叩くと、同室の相沢が出てきた。
「小野ちゃんなら もう旅行に出たわよ。夜行バスだって言ってた。」
「えーっ、メール!メルアド教えて!。」
「残念。日々の生活と別つため とかで、携帯置いて一人旅。」
郁は絶句した。2、3日で戻るとの事で、仕方なく帰りを待つことにした。

翌日 ギリギリで事務室に滑り込んだ郁に 堂上が声を荒げた。
「おい!10分前行動だとあれ程――。」
様子がおかしいのを訝しんだ堂上が 郁の顔を覗き込むと
「す、すみません!。寝坊しただけです。」
ガバッと頭を下げてグラウンドに出ていった。
言える訳ない。大切な本を無くしたなんて。2、3日すれば返ってくるとしても、手元を離れたというだけで 寂しくて悔しくて 申し訳なくて…。堂上との繋がりが断たれた様な胸の痛みがあり、昨夜はろくに眠れなかった。

カミツレのお茶を飲む約束をした。お正月明けの慌ただしさが抜けてからの公休に。教官から クリスマスプレゼントの様に告げられたその日程は それはそれは待ち遠しく。でも あの本がなければ、一緒に出掛ける権利も理由もないような。
今日は1日気の入りきれない訓練になってしまった。
「笠原の様子がおかしい。」
堂上は小牧にそう告げると グラウンドを走る郁に駆け寄ろうとした。グラリと揺れて 膝をつきそうになった郁はパーンと太股を叩いた。
「なんだ!?」
「笠原、顔を洗ってきます!。」
堂上は横を擦り抜けてその場を走り去っていく郁を呆然と見送った。

夜、堂上の部屋に小牧がビールを携えてやって来た。
「眉間の皺、凄いことになってるよ。」
既にビールを傾けていた堂上の前に 小牧はつまみを広げた。そのつまみを口に放り込んで 堂上は絞りだす様に言葉にした。
「ったく、体調が悪いんだか 心配事があるんだか。集中出来ないまま訓練に入れば怪我のもとだというのに…。」
言外に何も言ってこない郁への苛立ちと淋しさが滲み出ているようだ。
「途中から気合い入れ直してたみたいだね。もう新人じゃあるまいし あまり過保護にならくてもいいんじゃない?。」
小牧は柴崎から大体の事情を聞いていた。それを堂上に話すのは憚れる気がしたが、心配する気持ちも分かる。
「何だか大切な物を探してるみたいだよ。」
「大切な物?。何だそれ。」
さあ?、女の子には色々あるんじゃない?。
分かったような分からないような小牧の言葉に 堂上は更に眉間の皺を増やした。
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