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2014'11.19 (Wed)

「アジテーション」2

フラフラだった英香です。
年に数回やってくる頭痛の罠。主に季節の変わり目で春先の方がキツいんですが、寄る年波に逆らえないのか、今回結構強かった(´-д-)-3。
とはいえ 寝込んではいられないのが実情なので、別に引きこもってたわけでなく 普通に動いていたんですが、休めないから長引く悪循環。ちょっと睡眠障害っぽいところがあるので こんな時はしっかり眠れたならいいのになぁーと自分の体質に悪態つきたくなります。
それでも眠れないなりに横になったり目だけでも瞑っていたら 大分復活してきました(*^^*)。
薬は効かないので、時間が過ぎるのを待つしかないんですよね。てか、待てば復活できるのが分かってるので気が楽?です。
基礎体力?ないですよー←言い切るww

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「アジテーション」2


去っていった有理子を一同黙って見送った後に、視線はさり気なく堂上に集中される。
「計画は変更なしだ。堂上班は良化隊との抗争に備え現地警備につけ。」
緒形は静かに話を畳んだが、堂上は訝しんだ。
「いえ。あの口ぶりだと、博物館には何らかの形で良化隊らの圧力をかけられてると思いますが、報告は?」
「これまで書籍所蔵規模が小さいこともあって良化委員会もノーマークだったらしいんだが、館長が代わってからは書籍収集にも乗り出したそうだからな。検閲対象本の移送情報の流出があれば良化委員会も黙っちゃいないだろう。輸送経路を狙われるのは有り得る話だ・・基本都内の移動中に無理をするとは思えないが。」
「身辺警護の要請をするほどの圧力、ということでしょうか。」
手塚の言葉に緒形は腕を組んだ。
「・・情報資料館の良化法批判資料を所有していることが漏れたんだろうな。それだけをピンポイントで狙ってくる可能性は大だ。特に館長が女性であるだけに 脅迫紛いな手を打ってきてもおかしくない奴らだ。」
小田原で全押収出来なかった特務機関が意地でも欲しがる資料ということだ。
島津有理子は理事も兼ねている。身辺警護を含め、計画を練り直さねばならない。要人警護も特殊部隊の任だ。
「確認を取ろう。堂上、警備ローテーションに組み込めるか。」
全体の警備計画の編成を再考した。


会議が終わり、郁は日報と格闘していた。──集中できない。
堂上と面識のあるらしい有理子の言動からは、何かしら特別な意が垣間見えた。
郁の知らない堂上がいても不思議はない。だって自分がここに来たのは僅かに3年前なのだ。それまで何を経験し何を想いどんな行動を起こしてきたのか。その人生の中に あの女性がどんな風に組み込まれていたのか。──こんなに気になるなんて。
自分の不安な気持ちが、嫉妬心を駆り立てる。胸が苦しい。堂上のことを 艶やかな目で見つめた大人な女性の姿が頭から離れない。
すっかり手の止まった郁に 後ろから軽く拳骨が降ってきた。
「いった~い。」
「こら、手が止まってるぞ。さっさと書け。」
会議後にも残って緒形と作戦を練っていた堂上が事務室に帰ってきたのだ。いつの間にか他の隊員は帰途に就いたらしい。
「え、もうこんな時間。」
どれだけボーとしていたのか、小牧も手塚も日報は堂上の机の上に提出して帰寮したらしい。
「今ならまだ食堂に滑り込める。さっさと書いて帰るぞ。」
「わ、はい。」
言われてみればお腹がペコペコだ。残りを仕上げて帰る準備を急いだ。

外は真っ暗だ。冷たい空気が頬を刺す。
「もう冬なんですね。」
庁舎の光が届かなくなると、一層空の黒さに星が際立つ。この時期は早々に 東の空には三ツ星が輝くオリオン座がのぼる。
堂上は冬の空を見上げて立ち止まり、先を歩く郁に声を投げかけた。
「豪華な星空だな。」
同じように空を見上げていた郁も歩みを止めて振り向いた。
月明かりは郁の輪郭をくっきりと映し出す。幼さが残っていたはずなのに、目の前の郁はややシャープな面立ちに変貌しようとしている。乗り越えてきた経験を物語っているようだ。
「水戸の抗争を終えたばかりだというのに、立て続けで良化隊とぶつかるかもしれん。いけるのか?」
「・・・いけるのか とはどういうことですか?。いけるに決まっ──」
「こっち見ろ、笠原。」
「──っ」
堂上の方に振り向いた郁は 体こそ向けてはいるが視線は地面に落としているのだ。
「笠原。」
「・・・」
郁は顔を上げられない。きっと今、みにくい顔をしている。
水戸で初めて自覚した嫉妬という感情と、不安と恐怖と純粋な愛情と。いろいろがないまぜになった気持ちのままで、良化隊と対峙するのか。
堂上への想いがあれば、何でも乗り越えられると思っていた。気付かなかっただけで 自分がへこたれずにここまで来られたのは、全てこの男が前にいて追いかけさせてくれたから。好きでいさせてくれたから。
でも。
知らない1人の女性が現れただけで、こんなにも気持ちが揺らぐのだ。
あの人は何?
訊いたところでどうするの?
自問自答の渦の中、同等の恐怖に襲われる。
顔面が膨れ上がり、血に塗れ、敵味方の圧力で押し潰され引き回されていた良化隊員たちの凄まじい姿が、フラッシュバックとして再生される。
郁は思わず目を瞑って両手で顔を覆った。
ぐらりと揺らいだ郁の身体を支えたのは 正面から両肩を掴んだ堂上だ。
「───っ・・」
いけない。しっかりしなければ。
郁は足を踏ん張り 目の前の堂上の胸を押し返そうとした。
「あは、お腹がすき過ぎちゃって──」
続きの言葉は堂上の肩に吸い込まれた。
「あほう、強がるな。」
「強がってなんかっ・・・」
郁の後頭部に置かれた手が軽く叩く。
続く言葉を黙らせるには十分だった。代わりに漏れるのは 堪えきれない嗚咽。

基地に帰還してからは、時折夜中に目を覚ます。握った掌にはじっとりと汗が滲んでいて、部屋着で拭いながら 柴崎の寝息を耳にしては、ここは水戸じゃない と肩の力を抜くのだ。
汗を拭った掌には 未だに初めて人を撃った時の短機関銃(サブマシンガン)の感触が残っている。でも、涙は流さない。あの時抱きしめてもらったから。

今と同じように──。

「水戸の抗争は、関東広域の良化隊員を相当数動員してきていた。だから今回の書籍運搬を襲うとしたら少数精鋭でくると想定される。」
郁を落ち着かせようと思う時の堂上は、堅苦しい話し方で畳み掛ける。
帰還して初めて流す涙に郁は身を任せた。
耳元に落とされるその低く響く声にやがて嗚咽はおさまり、ふと今の体勢に羞恥を感じ始めた郁に 堂上は説明に入った。
「島津私立博物館は、俺が入隊2年目の時にも書籍寄贈の前例があるんだ。前館長はあまり書籍に執着なくてな、何かと良化特務機関の探りが入る書物は 親交のあった稲嶺司令を通して寄贈することになったんだ。今回のような重大な検閲対象図書はなかったんだが 俺は防衛部班長としての護衛で関わっていた。」
黙って聞いている郁に、ため息なのか躊躇なのか 堂上は一旦言葉を区切って話を続けようとした。
「島津有理子とは──」
「それは業務に必要な話ですか?」
有理子の名前が出て、郁は咄嗟に話を遮った。
「いや・・、しかし」
「有難うございました。もう大丈夫です。」
何かを切り出そうとする堂上の胸を 今度こそ押して体を離す。なんて居心地のよい場所なんだろう。ただの部下なんかが使っていいはずのない場所。水戸での抗争中に何度か世話になったこの場所は、本来自分なんかがおさまるべきではないはずだ。
誰にも渡したくないと強く願うのに、この話の先を聞くのが怖くて──、堂上の優しさに触れて勘違いに走った挙句に斬られるのが怖くて。
心弱った部下を慰めてもらうには、この場所は温かすぎるのだ。
「そうだ、あたし賞味期限近いラーメン食べておかなきゃ。忘れてました。」
じゃ、と振り切るように踵を返すと 逃げるように走り出した。
「笠原!」
呼び止める堂上に1度振り返ってペコリと頭を下げる。
「笠原復活です!。いい上官に恵まれました。明日からも 宜しくお願いしまーす。」
殊更笑顔で手を振ってから ピシッと敬礼してそのまま走り去る郁の背に、堂上は小さく吐き捨てた。
「何が復活だ。あのバカ・・」

温めたはずの腕の中は 冷たい初冬の風に冷やされた。

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 | 2014年11月19日(水) 23:06 |  | コメント編集

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 | 2014年11月21日(金) 15:36 |  | コメント編集

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