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2015'01.30 (Fri)

「アジテーション」7

こんばんは。
あら? 拍手コメントでは?
・・・・え、と。行方不明、というか、多分消しちゃったのね_| ̄|○ il||li。
とりあえず 連載を進めちゃいます。
実は「6」が長くなっちゃったので「7」に大半回しまして。で、次で終われる なんて考えてたら更に長く←
なので 終われませんでした(*´>ω<`*)。
更新しないと続きが書けないので(常に自転車操業)、コメントは後日にして先にアップです。
と言い訳はここ迄にして。

↓こちらからどうぞ。


【More】

「アジテーション」7


特殊部隊事務室には堂上1人で移送の最終チェックに入っていた。そろそろ有理子を送る時間だ。気が重いが仕方が無い。
結局 郁には声をかけられなかった。
辛い思いをしている今、助けを求めるのは卒業したはずの王子様になのか。郁を隣に感じていると思っていたのは勝手な解釈だったのかと、堂上は自分の驕りを自嘲した。
ガチャリと音を立てて事務室の戸が開いた。そろそろ警護に出る時間だから手塚でも呼びに来たのだろうと思った。
しかし入ってきたのは有理子だった。
「この部屋も久しぶりだわ。」
足繁く通っていたのは何年も前。有理子は部屋を見渡した。
「こちらからお迎えにあがる予定でしたが。庁舎内は勝手に出歩かないでいただきたい。」
小牧達が行き違いになっただろう、とため息をつく。
「いいじゃない。私は貴方に会いに来たんだから。」
手際よく準備をしてさっさと部屋を出ようとした堂上の腕を取って引き止めると、有理子は艶やかな笑みを見せた。
「父も祖父もこの歳まで結婚しない私に焦ってたみたいだけど、貴方が相手なら申し分無いって言ってるの。この仕事が終わったら、正式な婚約に進めたいわ。」
「何を勝手なこと言ってるんですか。俺にそんな意思はない。」
堂上は眉間の皺を深くした。
「堂上君の能力は私も祖父達も最大限に評価してるわ。結婚が決まれば地位も確固たるものになるのよ。この先も発揮される場が増えることになるし 私はその準備をしてきた。博物館直属の専門図書館運営もその一環。」
長年かけて政治的人脈も培ってきた。すべては図書隊に──堂上に都合よく動かせるように手配できるはず。
「そんな押し付けは迷惑だ。」
「どうして?。私を自由に使えるのよ。私を見てくれれば、私は何でもするわ。それに元々彼女さえ追いかけて来なければ 貴方は王子様なんかになり得なかったのに。ねえ、私にしなさいよ。私はあんな子供じゃないわ。」
掴んだ袖で堂上を引き寄せ、肩に腕を回した。


堂上と有理子の関係は業務には関係ない。気にしてる自分が悪いのだ。今は仕事に集中しなくちゃ。事務室に向かいながら 郁は昼間の有理子の言葉を心の隅に追いやる。
情報歴史資料館の貴重な書物を無事に武蔵野第一図書館に移送する。この単純な図式さえ頭に入れておけば大丈夫。堂上の足を引っ張る事無く、自分の仕事を全うすればいい。
郁は繰り返し唱えて自分に言い聞かせた。
──?
他は出払っているはずの事務室から話し声が聞こえる。
郁はノブに手を掛けて開けた。

「私を見て。」
有理子が唇を寄せてくるのを 堂上は引き離す。
「止してく──」
開けられたドアには郁の姿が。
「あ・・・」
固まった表情の郁の目には哀しい色が走った。
「し、失礼しました!」
慌てて戸を閉めようと狼狽える郁に有理子は笑った。
「やだ、見られちゃったわね。」
──たえられない。
郁は顔を背け、そのまま廊下を走って逃げた。
「笠原!」
堂上は有理子を振り払って後を追った。

廊下を走り 階段を一気に降りる。更衣室近くの例の非常口で一瞬怯んだものの 力任せにこじ開けて外に出た──ところで腕を引かれた。堂上が追いついたのだ。
「待て!」
「ごめんなさいっ」
「はあ?何で謝るんだ。」
堂上は暴れる郁の両腕を掴んで 向き合うように立たせた。郁は必死に身をよじるが堂上の力が勝る。
「いえ、あの──」
とても顔を見られない。郁は腰を引き 身体を折って、できるだけ俯いた。
例え本当に 教官と有理子の間に何があろうと、それは2人の問題だし!
正直 有理子は美人で家柄もよくて 仕事もこなすし、隣に立っててお似合いだし!
有理子のことは好きになれないけど、教官が選んだ人ならば───
「あほう!選ぶはずがないだろがっ!」
耳元で堂上の怒鳴り声が郁の鼓膜をビリビリと震わせた。
驚いて顔を上げると 正面に堂上の顔。
「え、なん・・」
「ダダ漏れだ。大体 さっきのは未遂であって、寄ってきたのを引き剥がしたとこだ。」
「へ?でも・・」
「彼女の言うことは事実じゃない。一方的なだけで 俺の意思は全くもってない。」
「──っ」

突然 堂上が郁に覆い被さり抱き込むと、植え込みの影に引き摺り込んだ。
咄嗟のことに声が上がりかけたところで堂上が郁の口を塞ぐ。互いの顔は極至近距離で密着して、腰を低く落とした体勢だ。
「しっ!」
叫ぶな、と堂上の真剣な顔。その視線は──建物の影に。
郁も理解した。
堂上に頷いて見せると 口から手が外される。その代わり ギュッと肩を引き寄せられた。これは身を小さく潜ませる為に。
『──声がしなかったか?』
『ここは死角になる。気付かれないはずだ。』
揃いの黒いジャンパーの見慣れない顔の男が2人。明らかに不審者だ。郁に緊張が走り 手が震え、堂上の胸のシャツを握った。
また抗争が始まるのだろうか。郁の脳裏に浮かぶのは茨城県展での悲惨な光景。
「大丈夫だ。俺がついてる。」
耳元で 場にそぐわないほど優しく囁く堂上の声に、郁の肩から力がフッと抜けた。堂上の手が郁の背中を往復すれば、じわりと力まで湧いてくるようだ。何かあれば今は武器を持っていない。それでも切り抜けられる、そんな自信が漲ってくる。
堂上の存在さえあれば、こんなにも満ちてくる想いも力もあるのなら──。

『……………島津……資料……女館長………』
漏れ聞こえてくるのは 島津博物館の資料に関すること。そして館長─有理子のことだ。探りを入れに来たのだろう。しかも有理子をターゲットとしていることも伺える。
やがて男達は大きな動きをする訳でなく、まるで庭を散策し迷ったような素振りを見せながら去っていった。利用者に紛れて偵察にやってきたのか。
郁は 詰めていた息を吐き出した。堂上の手も緩まる。
こんな奥にまで探りを入れてくるということは、移送の際 良化隊が何らかの動きをみせるのは確実だろう。少なくとも 今ここに有理子が来ていることは把握されているということだ。

「──教官、あたし 思い込んだら真っ直ぐなんです。」
「ああ。」
知ってる。走り出したらゴールまで。逆にアレコレ考えれば考えるほど動けなくなる。脊髄反射はいただけないが、郁の動きや閃きに助けられることもあるから、他がフォローに回れば突破口としては十分な戦力だ。
仕事でも。
プライベートでも。
高校生の時から王子様一筋に追いかけてきた、なんて最たるものか。
郁は堂上と向き合った。
「今は、良化隊から本を守って 移送を成功させることだけを考えます。」
相手は無理な手段に出るかもしれない。集中できないでいれば 作戦の失敗や身の危険を伴うのだ。
例え上官部下なだけであっても、堂上への信頼、自分自身の素直な想いは変わらない。今、揺るぎない気持ちを確信したのだ。もう抗争を前に震えることはない。
「そうか。」
堂上の瞳には 初めて会った時の少女の輝きのままの郁が映っている。自分が鍛え育ててきた──部下ではあるが、いつしか女性として輝きを増した愛しい存在だ。
「この案件が終わったら・・」

揺るぎないものを形にしよう。

2人 決意して、移送当日を迎えた。


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 | 2015年01月30日(金) 22:34 |  | コメント編集

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