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2015'02.05 (Thu)

「アジテーション」8

こんにちは。
降る降る言われる雪は まださほどでなく。今のところ この辺りは平和な冬を過ごしています。
年中行事にうるさい父ちゃん。先日の節分には男組は例年通り豆撒き戦争。鬼役も豆で応戦し、最終的には鉄砲持ってサバゲーに発展・・・するには寒すぎましたが(早々に撤収)。うちのオッサンも高校生も、何ら小学生のノリと変わりません。はい。

更新です。最後まで書けているのですが、いくつに分けるべきか。で、切りどころがなく、長めですが(我が家比)2つに。
明日で最終話です。
連載開始が丁度2ヶ月前。今回前半は設定のおさらい的なところがあります、スミマセン( ̄∇ ̄*)ゞ。毎度ですが、設定のツッコミは控えて下さいね←(自信ないので…>_<…)

↓こちらからどうぞ。


【More】

「アジテーション」8


祖父敬三氏が国を問わず骨董品と共に集めていた本を、博物館の図書部門として併設させたのが島津図書館だ。メディア良化法が施行されて以来収集を細々としたものに切り替えていた敬三氏だったが、元々所有していた書籍は貴重な資料も多い。ただ固有資産で規模が小さいことと、博物館が主体での運営に隠れた形だったので 良化隊の検閲は免れてきたのだ。
しかし博物館奥の書籍は膨大になりつつあった。近年収集された本は有理子の手による物が多い。
以前武蔵野第一図書館に本を寄贈した際 堂上達の手によって分類整理されてからは、専任司書を置き 管理するようになった。その後有理子自ら選書して系統だった収集も行われて今に至る。
島津側としては 私的財産を一般開放をする為に、検閲本の多数を武蔵野第一図書館に委託し 安全かつ自由な運営を図るとの方針だ。

図書館を広げる工事も進められている中、特殊部隊を含む防衛員が収集された。
「検閲本 その他書籍は、搬送車4台で輸送することとなる。野辺山氏から島津氏に託された良化法批判資料原本は 最終章2冊。小田原から押収された原本と合わせて、これで揃うことになる重要な資料だ。」
緒形が計画書を手にしながら指示を出す。
「良化隊の妨害を想定し、堂上班はこの原本を死守すること。」
班員が敬礼した。

各班 配置につく。 詰め込み作業やルート確認を忙しなくする隊員の間から、郁と地図を広げている堂上に 有理子が近付いてきた。
「今日の計画が成功する事を祈るわ。」
艶やかな笑みで堂上を見上げた。
「ここで 父に貴方の腕を更に確かめさせて、明日にでも稲嶺司令に婚約の話を通そうと思うの。」
有理子の父であろう。グレーの背広の体格の良い初老手前の紳士が、博物館建物から作業を見ている。
「・・・大切な任務の前です。今はそんな話をするべきではないと思いますが。」
堂上は丁重 かつキッパリと言い放った。
「試して頂かなくて結構です。稲嶺司令の手を煩わす必要はありません。──笠原!」
有理子の横をすり抜け、立っていた郁の腕を掴むと小牧達と合流しに歩を進めた。
郁は堂上の横顔を見た。迷いなく真っ直ぐに見据えるのは前。
そう、今は移送の完了が最重要事項。・・それでも───郁は有理子を振り向いた。
唇をかんでこちらを見詰めるその姿を目にして 一抹の不安を覚えるのだった。


堂上班と緒形は 原本を黒いショルダーバッグに収め、ワゴンに乗り込んだ。勿論後方支援部によって防弾仕様にされた図書隊装備だ。
敢えて搬送車は使用せず別に移送する計画だ。搬送車には一般検閲本を分けて厳重に積載してある。
搬送車が出て左折して行くと、一本先に停めてあった黒塗りの車が2台静かに発車した。
それを確認し、更に辺りを伺いながら 緒形が運転するワゴン車が滑るように発車──しようとしたところでスライドドアを開けて入ってきたのは有理子だ。
「有理子さん!」
2列目に座っていた郁が目を丸くした。同じく奥に座っていた手塚も。
「館長!危険です。」
3列目の小牧が腰を浮かせた。
「私は館長として最後まで見届ける義務があるわ。」
頑として動かない有理子に 助手席の堂上が振り向いた。
「任務遂行の妨げになります。降りてください。」
「あら、女性である郁さんにだって出来ることだもの、問題ないわ。」
「こちらは訓練を積んでいるんです。ただの移送補助ではないんですよ、良化隊の襲撃が無いとは限らないのに!。」
手塚の苛立つ声にも耳を貸さない有理子は、涼しい顔で足を組んで深く座る。
「良化隊は搬送車について行ったでしょ。こちらには気付いてないはずよ。たとえ襲われたとしても市街地だもの、かえって一般人の私がいた方が重大な危険を犯してこないわよ。」
「そんなこと──」
「っ、時間がない。今降ろして外で騒がられて何か感づかれても困る。」
緒形は苦った顔でサイドブレーキを下ろした。

ワゴンは搬送車とは反対の方向に進む。搬送車は最短ルートを取るが、こちらは一般車に紛れて別ルートで基地に向かう計画だ。
車内は沈黙していた。
「私が持つから。」
有理子は郁が抱えていた 原本の入ったショルダーバッグを取り上げた。
「わ、困ります。」
「これはね、野辺山のお爺様から私が預かったものなのよ。寄贈本の移送自体は図書隊に委ねはしたけれど、この本だけは 私の手で完遂させたいの。大丈夫よ、危険はないわ。」
「だから、そんなの分かんないじゃないですか!」
押し問答をしても有理子の決意は変わらず、郁はトラブルのない事を祈った。

ワゴンはメイン道路を抜け、工場街へ。この工場街を抜けてから折り返して基地裏の通用口から侵入するルートは、遠回りだが 万が一良化隊が襲撃して来ても市民の巻き添えを最小限にできる。
「取り敢えず追跡されてる気配はないね。」
小牧が後方を監視し、なんとか工場街を抜けるところまで来た時、緒形が急ハンドルを切った。突然脇道から黒い車が出てきたのだ。
「!」
危うく接触するところを回避したが、黒い車はワゴンの後ろに着くと 執拗に車間距離を詰めてくる。
「良化隊か!?」
窓に偏光フィルターが貼られた 見覚えのある車。ガンっとリアバンパーにぶつかる衝撃があった。
「きゃあ!」
「有理子さん 歯を食いしばって!舌を噛みます!」
郁は有理子の身体を引き寄せた。
再び衝撃を受ける。
「っ、待ち伏せされてたのか!?」
緒形はタイヤを軋ませて別の脇道に入ろうとした。しかし向かいから来た別の車に道を塞がれ、切り返すにも後方から挟み撃ちになる形だ。
「どうして!?」
用意周到な良化隊の動きに郁が叫んだ。目眩を起こした有理子の背を摩る。
「何て手荒な!こんな危険な行為はしない約束・・・あ!」
有理子は慌てて両手で口を塞いだ。
「!?今のは どういうことですか!」
小牧が有理子の肩に手を掛けた。
「車を捨てるぞ!」
バックで蛇行し良化隊から離れたところで緒形の指示が出て 車を降りる。
「二手に分かれろ。手塚!カバンを!」
ここからなら うまく相手を撒けば基地に駆け込める距離だ。地図によれば小さな団地と公園を経由すれば複数のルートが得られるはずだ。
手塚が有理子の持つショルダーバッグに手を伸ばした。
しかし有理子はワゴンから飛び降りると、バッグを抱えたまま手塚の腕を掻い潜り 基地に向かって走り出した。
「ダメだ!」
良化隊の車が有理子に向けて発進したところを、緒形がワゴンを衝突させて防ぐ。と同時に男達が飛び出してきた。
車2台から計6人。
咄嗟に 手塚と小牧が応戦した。
「有理子さん!」
走る有理子を郁が追った。堂上も続く。
「来ないで!」
有理子は必死に走るが当然すぐに郁が追い付いた。郁が腕を掴んだところで、郁ごと細道に引っ張り込まれた。堂上だ。
「走れるか!?」
有理子の足元は踵の低いパンプス。普段カツカツと音を鳴らせていたハイヒールではない。
「──はじめから・・」
「違うの!こんなはずじゃなかったの!」
ただ脅す真似をされる中、堂上達と共に原本を搬入するつもりだった。自分にもそのくらい出来るのだと、ひと芝居打つだけの筈だった。
涙目で縋る有理子の後方から男の姿が見えた。2人組だ。
「走れっ」
1人をなぎ倒し、堂上がショルダーバッグを掴んで肩からかけると、郁が有理子の手を引いて堂上の後ろを走る。小路を右へ左へと入り込み、物陰に隠れた。郁達を見失った男は、無線で仲間を呼んでいるらしい。
息の上がった有理子が 喘ぎながら郁に懇願する。
「私はいいから 置いて行って。」
「出来ません。捕まれば──奴等は有理子さんを人質に何かしら要求してくることも考えられます。有理子さんに危害を加えないとも限らない。」
そんな相手と戦っているのだ。
「どうしてこんなことに・・」
頭を抱える有理子に堂上は言った。
「貴女は何を条件に良化隊と交渉したかは分かりませんが、都合よく事が運ぶわけないんですよ。向こうも館長である貴女を利用する為に策略を練ったんでしょう。」
震える有理子の身体を郁は支える。
再び移動し、良化隊員らしき足音をやり過ごしてから、堂上は表の道の様子を見に その場を離れた。
「有理子さん、足は痛くありませんか?。痛ければあたしが負ぶって走れますので言って下さいね。」
努めて冷静に声を掛ける郁を、有理子は疲弊を貼り付けた訝しむ表情で見た。
「どうして?私は郁さんにとって邪魔なだけでしょ?。私なんて構わないでさっさと受け渡せば、楽に堂上君と逃げ切れるでしょうに。」
「いえ、有理子さんの護衛も任務です。貴女を放っては行けない。」
郁に真っ直ぐに瞳を見据えられて、逆に有理子は視線を外した。
「私はずっと堂上君が好きだった。全く振り向いて貰えない年下の彼をどうしても忘れられなくて 手に入れたくて──私を見て欲しいの。あの目でこの私だけを。」
「・・同じです。でも愛するって、お互いに見つめ合うだけってことじゃないと思うんです。同じ方向を見つめて 共に歩んでいける──そんなことも含まれるんじゃないかなって。」
「同じ方向・・・」
「あたし、確かに王子様に会いたくてここに来ました。でも今は、教官と同じ光景を見たくてここにいます。王子様だったことも引っくるめて、教官と一緒にいたいんです。──例え部下としてしか見られていない一方通行でも。」
「貴女、知ってた・・・?」
ふわりと──敵に追われていて笑む場面ではないのに、郁の表情は清々しいほどに美しく。子供だと思い込んでいたのに、自分よりずっと輝かしい女性の姿。

「新たな追っ手が来る。何とか撒いて小牧達と合流するぞ。」
戻って来た堂上は郁と目を合わす。言葉はなくとも意志が繋がり、郁は力強く頷いた。

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 | 2015年02月05日(木) 18:42 |  | コメント編集

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