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2015'02.06 (Fri)

「アジテーション」9(完)

おはようございます
夜中、隣で寝てるチビが妙に熱くて。普段母ちゃんの湯たんぽさんとして重宝してるんですが、あちち過ぎる。
ちょ、そろそろインフルエンザの流行も山まで登ってきているらしく、「ヤバイ」「まさか」「姉ちゃんに怒られるぞ!」とヒヤヒヤしました。
が、朝には普段通りε-(´∀`*)ホッ。
あかん、受験本番まで10日。健康管理には気を付けねば。(マジで殺されかねん)

更新です。
最終話です。ゆっくり更新だったので『やっと』と言いたくなります。この場面に来るためにここまで長くなるとは思いませんでしたが(笑)←
感想いただけると 嬉しいです。
↓こちらからどうぞ。


【More】

「アジテーション」9(完)


追われるうちに 入り組んだ団地に追い込まれていたらしい。堂上は慎重に歩を進めた。
姿は見えないが 足音が近くに聞こえると、それを避けて路地を進む。

・・・息が苦しい。膝が痛い。足が上がらない。有理子の動きが重くなった。
郁を見れば息一つ上がってもいない。有理子がついて来れるペースに合わせて移動してくれているのだ。同じ女性?。いや、訓練を積み 鍛えられた図書隊員なのだ。
有理子の体がよろめき、たたらを踏んだ所に空き缶があった。
カン、と路地に高い音が反響した。
「そっちだ!」
男の声がした。
堂上と郁が両方から有理子を抱えて走る。咄嗟に曲がった先は──行き止まりだ。しかし 背後から人1人分の足音が迫っている。

堂上は待ち伏せの体勢をとった。単身であれば打つ手はある。
「隠れて!」
郁は有理子をしゃがませて電柱の影に押し込んだ。
そして──
郁は、男が曲がってきたタイミングで堂上の襟を引き寄せ ぶつけるように唇を押し付けた。
「!!」
堂上の唇に。
長く。
時が止まったように。

重ねただけの郁の唇は力が入って固く、不器用そのもので。しかし意図を汲んだ堂上は 郁の背中に腕を回して男に背を向けてショルダーバッグを死角に入れた。その上で見せ付けるように唇を重ね続けた。
呆気に取られたように動きが止まっていた男が舌を鳴らす。
「チッ、バカップルめ。こんなところでヨロシクやってんじゃねーよ。」
壁を蹴って引き返していった。
『いたか!?』『いや、違った。』
簡単なやり取りの末に声が遠ざかっていくと、やがて郁の肩から力が抜け、唇が離された。
「・・何とか・・誤魔化せた・・ようですね。」
「・・・」
取り敢えず危険は回避されたらしい。しかし 郁は顔を上げられないでいた。ただただ俯いて堂上の眼差しを避けるしかない。
それもそのはず。
咄嗟のこととはいえ、想い人の唇を強引に女が奪う?。しかも堂上の意向も丸っと無視で!。
「かさは──」
堂上が動く気配を感じて郁は一歩後ろに飛び去ると、慌てて両手を顔の横でヒラヒラと振って見せる。
「スミマセン!!。あ、ちょっとした事故ということで!。ノーカンですよ、ノーカン!」
ファーストキスだった!なんてことは取り敢えず置いておく。己のあまりの暴挙に、血の気は引いてるはずなのに 今の顔は真っ赤だと自覚できる。

死ねるから!。普通に死ねるから!。

この場から逃げ出すか消え去るか。その算段ばかりが脳内で渦を巻く。
「・・・ノーカンだとぉ?」
低い。地を這うような低い声に、郁は縮み上がった。眉間の皺を深くした堂上の手が延びてきた。
死ぬのか?。いや、いっそ自分で舌を噛んで死──
郁は 腕を掴まれ、襟を引かれて。
唇が重ねられた。

郁は目を瞠り、体を硬直させる。
1度離れてもう1度、襟から後頭部に掌を移されて今度は柔らかく。ぶつけただけの先ほどの郁とは全然ちがっていた。
キス、してる。
遅れて理解した郁がゆっくりと堂上の腕に体を預けると、堂上はほとんど唇を重ねたまま掠れた声で囁いた。
「これでもノーカンか?」
時折 チュッと音をたて、角度を変えながら繰り返されるキス。
もう・・・っ
膝から崩れ落ちそうになった郁から唇を離した堂上に、乱れる息のまま答えた。
「カ、カウントなんて──」数えられない。
微妙に低い肩に額を載せた形で縋り付く郁を、堂上は強く強く抱き締めて 耳元で熱く囁いた。
「ノーカンなんかにされてたまるか。」


「見せ付けるわね。」
有理子の声に 2人我に返る。
「な・・・」
しかし直ぐに人の気配がして緊張が走ると、固唾を呑んで辺りを窺う。
「走れるか?」
未だ縋り付く形を取っていた郁は、頷いて堂上のシャツを強く握ってから立ち直った。
もう逃げ道はなく、ここでまた出くわすようなことがあれば、直接応戦するしかない。堂上と郁は身を低く構え、有理子を背後に匿った。

僅かに争う音がして 人影が現れた。
堂上が飛び出し 相手の高い胸倉を取った段階で、動きが止まった。
「堂上二正!ご無事ですか!?」
手塚だった。その先で男が小牧によって沈められているのが見えた。
「追っ手は全員捕縛して、これで最後だよ。」
その言葉に緊張が解かれ、郁に支えられていた有理子は その場にペタリとへたりこんだ。
そこへ図書隊のワゴンが着けられてドアが開かれた。
「館長、車へ!」
応援が間に合ったのだ。堂上と郁は有理子を抱えるように車に乗せ終えると、大きく息を吐いた。
原本は死守し、後は無事基地に戻るだけだ。
捕縛された男達は 用意された中型トラックに乗り込ませる。と、最後に捕縛した男が堂上と郁を見て目を剥いた。
「お前ら、さっきのバカップル・・!?」
バッと、2人互いに顔を背けた。
「はいはいはいはい。」
小牧が男を奥に押しやる。
「細かい報告は また後で。じっくりとね。」
別の追及しなくちゃだな〜と、堂上の顔を見てから 笑顔で一緒に乗り込んでいった。


改めて有理子が乗ったワゴンに堂上と郁も乗り込んだ。
団地を抜け 高い塀に沿って走ると通用口が見えてきた。
「はい、有理子さん。」
郁が有理子の膝の上に載せたのは原本の入ったショルダーバッグ。
「・・・私にはこれを持つ資格はないわ。」
「いいえ、これは有理子さんが野辺山会長から託された本でしょ?。有理子さんは本を守るためにあれだけ走り回ったんだもの。自分の手で完遂して下さい。」
有理子の足は慣れない逃走でできた靴擦れによって血が滲んでいる。ショルダーバッグを胸に抱え、小さく嗚咽を漏らした。

通用口を通過し、基地の駐車場に入った。
ワゴンのスライドドアを開けると、そこには車椅子に乗った稲嶺が出迎えていた。
「お疲れ様でした。大変な目に合われましたね。」
有理子に向けて優しい眼差しの稲嶺が労う。
「違うわ。・・私は・・・私は・・・」
自分の欲の為に任務の邪魔をし、堂上や郁をはじめ図書隊を危険に晒した。敵の手中に嵌り、託された原本まで奪われそうになった。館長の仕事は何一つ出来なかった。
稲嶺は車椅子を操作し、項垂れた有理子の前に止まった。
「先発した寄贈本は無事移送を完了しました。あなたが囮となったおかげで、今回の実行犯は一網打尽となったんですよ。」
有理子が行った不確かな情報操作では良化隊は身動きがとれず、唯一動いたのは有理子を監視していた小さな賛同団体だけで、すべて取り押さえられたという。
「原本を。」
手を広げた稲嶺にショルダーバッグから出した2冊の本を渡した有理子は、そのまま膝を折って稲嶺の膝にに縋って泣いた。
「おや、懐かしいですね。」
幼い頃の まだ無垢だった頃の有理子にしたように、優しく頭を撫でる稲嶺は、この任務の見届けを最後に退任する。
もう季節は移り変わっていた。



郁は有理子の足の応急処置をしていた。
「このまま医務室に行きましょう。靴、履くのはお辛いでしょうが。」
ショルダーバッグの中には簡易の救急キットが入っている。取り敢えず靴擦れは絆創膏で保護する程度にしか処置はできないが。
「大丈夫、歩けるわ。それよりも──」
足元でゴミを片して見上げてきた郁に有理子が言った。
「カウント、教えてあげましょうか?」
初めキョトンとした郁の表情が、みるみる真っ赤に染め上がった。
「いやいやいやいや、あの、あれは───!!」
すっかり。いや、忘れていたわけではないが、都合により記憶を片隅に追いやってただけで。
そんな郁を視界に、有理子は堂上に声をかけた。
「郁さんはね、王子様だった堂上君をひっくるめて 今の堂上君が好きなんですって。」
耳に入る間に勢いよく振り向いた堂上は、驚愕の面持ちで郁を凝視した。
「ど、どうして王子様云々を知って
・・・」
「っ、──手塚慧からです。食事代を返してもらった時の手紙に書いてありました・・。」
今更だ。チロリと堂上の表情を伺いながら正直に話す。
「あの野郎」
堂上の呟きに有理子が笑った。
「あら、私より意地悪な人がいたのね。」
明るい声が有理子から弾けた。
「堂上君、郁さん、意地悪してゴメンなさい。」
ペコリと頭を下げた有理子の顔は穏やかだ。
「堂上君、島津図書館では児童書を充実させた新しい図書館にリニューアルするの。あの時貴方が手にしていた本がきっかけで、私も勉強したのよ。」
初めて会った時、堂上が宝物を扱うように手にしていた1冊の童話。
後に見計らいをした時の本だと知って、どうして堂上に惹かれたのかが分かった。今まで認めたくなかったが、少女を想う堂上に惹かれたのだ。
だから。堂上と郁、ひっくるめて2人を認めることが出来るはず。
直ぐに、とは言えないが。
「私にも 同じ方向を見て愛し合える人が見つかるかしらね。」
遠回りはしたが、ようやく素直になれる自分に会えたと思えた。



疲労はあるが、後処理に追われる。
搬送車から検閲本やその他資料の積荷を下ろすのは防衛員だ。登録及び修繕の有無、その他必要な処理に追われる業務部はこれから忙しくなる。
特殊部隊は捕らえた男達をトラックから下ろした。

他の隊員に有理子を委ねて、堂上と郁は暫く並んで作業を眺めていた。
「えっと・・・」
郁はいたたまれなかった。
どさくさに紛れてすることしちゃったし、郁の気持ちは有理子にしれっと本人に伝えられちゃったし。
でも堂上の方は・・・?
やられたからやり返しただけなのか、それとも脈があるからの所業と受け取ってもいいのか。特殊な状況下だった故に分からないでいた。

「分からないなら、もう1度ここでカウント取り直してもいいんだぞ。」
降ってきた言葉に 郁は弾かれた。
堂上を見れば、甘いような、熱い眼差しを投げかけている。
「教官・・。」
郁の揺れる瞳をのぞき込む。
「分かったか?」
堂上は郁の手を掬い取った。

「そこの『バカップル』!」
ビクりと振り向けば ニヤニヤした小牧が腕を組んで立っていた。
「あ、やっぱりバカップルなんだ。」
慌てて繋いだ手を後ろに隠したが、堂上は外す気はないらしい。
「あの男の調書、誰が取ればいい?。俺で構わなければ──」
「コッチで取る!!」
さすがにそれはさせられない。根掘り葉掘り いらんことまで報告書を作成されそうだ。
堂上は郁の手を取ったまま走り出した。


どんなことがあろうとも、この手は繋がれる。そんな未来があったのだろう。

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 | 2015年02月06日(金) 13:09 |  | コメント編集

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 | 2015年02月06日(金) 13:35 |  | コメント編集

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