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2015'05.06 (Wed)

「堂上、2人」4

こんにちは。
GWも終わりますね。木金を乗り切ればまた週末。母ちゃんにはGWなんて名ばかりですが、朝「起きろー」な切羽詰ったやり取りがない分 楽だな~というww。
娘には1日も休みはなく、早朝から夜まで部活三昧。はう、お弁当に休み無し( ー̀εー́ )。
でも根性で近場の温泉宿に家族で一泊しました。いつものスーパーくらいの近場に温泉街があるんです。男組は先行しての別行動。
女組。夜は8時まで部活の娘を連れて食事後宿入りしたのは10時過ぎ。露天風呂は閉まってました(T_T)。朝は6時には出ないと間に合わないってんで、母ちゃんと娘の滞在時間は8時間なく、風呂入って寝に行っただけの家族旅行。
しかし温泉って凄い。娘は翌日ハードな練習にも拘らず身体が軽かった、と効果てきめん。若いって凄い。代謝が良いのね。
で、母ちゃんは、、、勿体無いからと時間が許す限り温泉に浸かった挙句、見事に湯疲れを起こし翌日ダウンしちゃいました←阿呆。死ぬかと思った。

更新です。連休中の塵のような文章を集めました。いつもより長めですが ただそれだけな(´×ω×`)。進展はこれからになりますね。
取り敢えず続きです。
↓こちらから どうぞ


【More】

「堂上、2人」4


閉ざされていた隊長室に、郁と手塚は呼ばれて入った。
椅子にドッカリ座っているのは玄田隊長。手前にいた小牧が軽く手を上げたので敬礼して応えた。
普段は開けっ放しの隊長室だが 何かイレギュラーな報告があるのか。昨日の今日だ、未来企画絡みかもしれないと、手塚の表情は固かった。
小牧は、難しい顔をしてソファーに座っている堂上の肩を叩いた。顔を上げたが視線は落としたままの堂上が、大きく息を吐いて立ち上がる。その表情は困惑の色が濃い。
郁にも緊張が走る。
と、堂上の陰に隠れてもう1人座っている隊員がいることに気が付いた。
その、堂上に遅れて立ち上がった隊員の顔を見て、郁も手塚も息を呑んだ。

この数時間で もう何人のこの表情を見ただろうか。最初の自分からしてそうだったのだから仕方がない。
部下2人の目が忙しなく堂上と隊員の顔を行き来する。
「え、・・・と、?」
何かを発しようとしたものの言葉を失った郁に対し、手塚は常識的な結論を求めた。
「あの、御親戚の方、ですか?。」
殆ど瓜二つの顔は、やや年齢が違って見えるだけだ。その他の違いといえば、堂上より若干細っそりとした体格なのと、さっぱり短めな髪型だということ。とても他人とは思えない人物だ。
「いや、本人だ。」
「「はあ?」」
玄田の言葉に 手塚でさえ上官に対する態度とは思えぬ反応をするしかない。意味が分からない。
面倒くさいな とでもいうような目で、玄田は小牧に説明をするように促した。確かに説明しにくい内容だ。堂上は口を開こうとせず、じっと何か考え込んでいる。
小牧は1度肩を竦めると、事態を呑み込めていない部下達に 今朝から堂上の身に起きている状況を順に説明し、若い堂上には班員の紹介をした。



「凄ーい。じゃあ、この人は昔の堂上教官なんですね。」
小牧からの説明を受け、郁が興味津々で若い堂上の顔を覗き込むと、手塚は「失礼だぞ。」と制しながら 目の前の事実を懸命に咀嚼しようと試みる。こういう時 単純な郁の方が柔軟性が高い。
「ん?入隊したてってことは────もしかしてあたし達より年下ってことですか!?。わー、新鮮っ!」
肌艶の良い堂上というのは印象が違う。
ずいっと詰め寄る郁の勢いに押され気味だった三正の堂上だったが、別の意味の驚きを隠せなかった。
「た、隊長!ここ、特殊部隊なんですよね?。女性隊員って・・・」
「おお、笠原は特殊部隊全国初の女性隊員だ。お前さんは将来女性隊員の育成に関わっているってことだ。」
ニヤニヤ含み笑いを貼り付けながら玄田は腕を組んだ。何でかと言うとだな、の言葉は睨む二正の堂上に遮られた。
いらんことを言いそうな玄田との間に二正の堂上が割り込むと、意を決して宣言した。
「いいか、現段階ではお前は俺であってもただの新人だ。ここでは俺の指示に従ってこいつらと行動を共にすることになる。但し、だ。」
言葉を切って部下をも含めて睨む。
「余計な詮索はするな。いいな。」
過去や未来の世界に干渉すべきではないのは当然なのだが、寮生活だ。存在を隠し通せるとは思えない。ここは玄田の言う通りにして 敢えて表に出した方がいいのかもしれない。
堂上は改めて 過去の自分である若い堂上三正を見た。まだ勢いだけで未熟だった自分。この数ヶ月後に勝手な見計らいを行使し査問にかけられる。
コイツのせいで、コイツが間違った背中を見せたせいで────。
本来ならば膝詰め説教どころでなく、殴り飛ばしたい程の衝動に駆られるが、まだコイツには身に覚えのない事で・・・。
つ と無邪気に(多分隊長の感覚と同じくらい)楽しんでいる郁を盗み見る。
・・・ホントに顔を覚えてないんだな。
面影どころでなく、お前の会った三正(王子様とは言わない)そのままだろが。と、ホッとするのと同時に複雑な思いで肩の力を抜いた。最大の懸念事項とも言える王子様バレだけはなさそうだ。

玄田は椅子から立ち上がると、2人の堂上の後ろに立って肩をバンと叩いた。
「よし、朝のミーティングが始まる。取り敢えず若堂上はお前さんの遠い親戚で、研修に来たということにでもしておけ。でだ。」
郁と手塚を見遣る。
「階級は上だが新人だ。手塚と笠原は先輩として若堂上の指導に当たってみろ。体外的には三正ではなく一士とした方が自然だろう。いいな。」
図書大の制度がなくなった今、新人から三正の肩書きを持つ者はいない。え と手塚と郁は互いの顔を見合うが、玄田はそのまま隊長室を出てミーティングに向かってしまった。
一士となるにはさすがに不満そうな顔をしているが、隊長の命令は絶対である。
若い堂上は1つ年上である郁と手塚に向かって軽く敬礼をした。

特殊部隊全体でのミーティングでは あまりのソックリさに初めはどよめきが起こったが、元々どんな人材でも扱ってきた部隊だ。顔が似ている程度なら弄るネタにするくらいで、詮索することなく すぐに通常の研修生として受け入れた。
「よう、若堂上の顔は懐かしい顔だなぁ。」
「若堂上、お前らの家系はみんな同じ顔してんのか。」
あっという間に『若堂上』が定着すると、自分が若くないと言われてるようで不貞腐れる二正の堂上がいた。そんな堂上の隣に楽しげな郁の笑顔。
「ふふっ。『後輩』指導は任せておいてくださいね。」
「・・・」
張り切る郁に、ますます堂上の顔は苦った。


最初の勤務は書庫作業だ。
「書架の配置を覚えるだけでも大変なのよね。基本的には奥から日本十進分類法に従って格納されてるんだけど、この時期リクエストも多いから、まずは配置を把握し終わってから処理に参加した方がいいわね。」
武蔵野第一図書館の地下書庫は都内最大級で蔵書数は膨大だ。そこを端末から吐き出されるリクエスト帳票を手に本を探し出庫する。
特殊部隊配属前だから図書館業務に関わることはなかったはずだと、郁は若い堂上に声をかけた。分類法の把握をせずに臨んだ書庫業務初日の苦い思い出が頭を過る。手塚にこてんぱんに言われ、堂上にはカバーと采配で助けられた。
隊長命令により、手塚は若堂上の書庫配置を一通り説明した。年下といっても本来階級は上でもあるし、若いといってもあの堂上を指導している形だ。
「はい。了解です。」
「・・・」
下から見上げてくる若堂上の返事に、手塚は何とも複雑な面持ちになる。正直やりにくい。

蓋を開ければ。
初めは様子見をする状態ではあった若堂上も、ちょっと手間取った郁の帳票をひょいと奪うと難なく移動式閉架書架を操作し蔵書を見つけ出した。そこからは皆と同じように処理に携わった。

昼、リクエストが途切れて5人が集合する。戦力が1人増えて業務効率は格段に良かった。
「書庫業務は初めてじゃなかったんですか?。なんで最初っからこなせるんですかぁ?」
ペットボトルのお茶を手にして、郁はどちらの堂上にともなく疑問を口にした。
「んなもん────当然だ。」
図書大後半ではOJTにおいて防衛部志望であっても戦闘業務だけではなく図書館業務も経験している。卒業時には知識実務共に十分1人前であり、だからこその三正なのだ。その上次席である。実際防衛部であっても業務部のフォローに駆り出されることもあった。
「つまんない。教官は最初っから教官なんだ。」
郁はむーと唇を突き出したままお茶をふくむ。
「例え新人であろうと 笠原から指導を受ける図になんかなってたまるか。」
「あの程度のリクエストにもたつく先輩に指導されたくありませんね。」
ダブルで揶揄されては悔しいものだ。
にしても出庫の合間に返納図書の配架も余裕でこなす手際はとても新人とは思えない。
「隊長、知ってて指導しろっての?。」
手塚や郁も防衛部に配属されていたなら 今頃下士官の面倒を見る経験を積む時期であるが、直接特殊部隊入りした2人には新規隊員が入らなければその経験を持てない。毎年人員補充されるわけではなく、ましてや昨年2人が入隊したばかりだ。暫く新規採用はない見込みだ。若堂上は体の良い練習台になる、と玄田の遊び半分の指示であろう。
「何言ってるんだ。そもそもお前は指導出来るレベルになってないだろ。そんなんで先輩面するなんておこがましいにも程があるぞ。」
手塚は呆れてため息をついた。
「でも手塚一士の説明は非常に系統的で正確でした。十分指導に適していたな。さすが新隊員から選抜されただけあって優秀なのがわかる。」
若堂上は玄田の意図を察していたのだろう。そしてこの短い間に 2人の能力を判断したようだ。少なくとも図書業務では郁に指導の場はない。
「あ、有難うございます。って、あの・・・」
どうも手塚は若堂上と接する時に尻座りが悪くて仕方がない。

そんな若堂上と手塚のやり取りを見て郁はムクれた。
「くそう、訓練じゃ負けないんだから!。」
「ほう、男に勝つつもりとはね。勇ましさは特殊部隊並なんだな。」
「あ、あたしなんて新人の時 堂上教官に畳拝ましたことあるんですからね!」
「お前、不意打ちのドロップキックをカウントに入れるのか。」
「うわ、オッサンになるとそんな醜態晒すのか?。俺ならそんな隙与えないね。」
「オッサンだからじゃない。コイツが山ザルだっただけだ。」
「失礼な。大人げもなく女子に向かって腕ひしぎかましたくせに!」
「何にせよデカいだけの相手に負ける気はしないね。」
「デカいは余計だわよ。こちらには1年の実績があるんですからね、戦略ってもんがあるわけよ。」
「未だに脊髄反射で動く貴様に戦略なんてあるはず無いだろが。」
「「お手並み拝見といこうじゃないか。」」
若堂上も、郁に対して初めこそ年上の先輩に接する姿勢をとっていたのが、いつの間にか方向性が変わっている。そしてつられるように参加?する二正の堂上も。

手塚は堂上2人の意外な表情に目を見張り、小牧は腹を抱えて上戸に陥った。



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 | 2015年05月06日(水) 15:52 |  | コメント編集

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