All archives    Admin

07月≪ 2020年08月 ≫09月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031

2015'05.14 (Thu)

「堂上、2人」5

こんにちは。
春、交通安全教室の季節です。小学校では自転車指導が行われますが、実は4年生であるチビには敢えて自転車の乗り方を教えていませんでした。
上の子達の経験で、今の生活だと自転車で遊びに行く機会は殆どなく、乗らないままサイズが合わなくなるのが目に見えてましたので。ま、勝手に乗り出して事故に合うのが怖い過保護な理由もあるのですが、自分から欲しがるまでは と放置していました。
が、この交通安全教室を前に俄然乗りたい熱が(^^;)。・・・じゃ、父ちゃん頼む。母ちゃんはもう自転車追いかけられない←
この週末は特訓、かな?

更新です。続きになります。まだ動きませんが(^_^;)
↓こちらから どうぞ



【More】

「堂上、2人」5


特殊部隊の業務は多岐に渡る。
防衛方にはない図書館業務も含め、図書館の警備警戒・市街哨戒といった警備業務。
そして。良化隊をはじめとした表現規制に賛同する組織・団体に対応すべく日々戦闘訓練を積むのが主な仕事だ。


戦闘服に身を包んだ郁は張り切っていた。
今日の訓練はグラウンドでの基礎訓練が主で、得意の100m走もある。新人時代は倒れ込むようにゴールしていたハイポートも 今では余力を残して戦闘体勢を崩さずにいられるよう、配分する技量も体力も得ている。
先に行なった射撃訓練では流石に敵わなかったが、短距離走なら僅かだが今の教官よりタイムを上回る自信がある。若い堂上がどれだけのものかは分からないが、少しは悔しがるところを見てみたい。いつだってカッコいい教官に、対等な条件で勝ってみたい。
一生かかって追い付けないと思っていた背中が、ちょっぴり身近に感じる姿で現れたから。


訓練は地道な基本教練から始まり 列を崩さずのハイポートで体力を削ぎ落とす。その上で各種野外戦闘の訓練をこなしていく。
元々特殊部隊を想定しての自主訓練を欠かさなかった若堂上は、初日から遅れをとることはなかった。逆にこの訓練内容に女性隊員である郁が難なくついていけていることに驚いた。

休憩を挟んで調整を行う。戦闘服の装備を外し、汗だくの上衣を脱いだ戦闘下衣である黒Tシャツだけになる。身が軽くなった分走り安い。
堂上が各班長と打ち合わせをしている間に 周回して身体を解し、郁は手塚と、若堂上は小牧とストレッチを組んでいた。
「これから100mのタイム測るっていうから、そこで勝負しましょうよ。」
「脚が長い方が有利だからっていう理由で仕掛けてくるなら返り討ちですよ。今までそう言ってきた奴で本当に速い人物はごく僅かだ。」
これまでに何度もそう勝負を挑まれては一蹴してきたのだろう。若堂上は郁を冷笑した。
実際 堂上は小柄ながらもがっちりした体格で、訓練は持久力重視で行うが、フィジカルの強さにも長けており短距離は得意だ。
見たところ郁には無駄な筋肉が付いていない。しかしそのスマートさは長距離向きとまで思え、訓練についていけるだけの体力があることは分かったが まさか自分より速いだなんてありえないだろうと若堂上には判断された。

タイム測定に備えて各隊員がアップする。。郁は大きな動きで軽く反動をつけながら身体を動かしていた。
「笠原、本領発揮だかんな。張り切ってやがる。」
進藤がストップウォッチを準備しながら若堂上にニヤリとした顔を向けた。郁と若堂上の競り合いに興味津々だ。
そんなに期待されている走りなのかと、再度確認する為に 若堂上は郁の姿を探した。
郁はグラウンドの脇で黙々とスタートダッシュの練習をしていた。
一目見ただけで分かる。
郁のそのフォームの美しさに息をのんだ。
前を見据える眼差しとスタートしてからすっと伸ばされる背筋。接地の瞬間に軸が通っている そんな滑らかな走りは、股関節の柔らかさと上半身の力強さとが連動され、あっという間にトップスピードに乗ってくる。
筋肉量の割に瞬発力が高いのはおそらく筋肉の質の良さだろう。恵まれた身体能力が最大限に活かされている。

「見惚れちゃうよね。笠原さんは元陸上選手だから気を抜かない方がいいよ。」
小牧の忠告にドキリとした。今 自分は見惚れてたのか?
いや、確かに力強い腕の振りと肘の角度の正確さ、全体にバランスのよい姿勢は戦闘職種というよりスプリンターで、周りの武骨な集団の中では目を惹くものがある、からだ────。

「ふふふ」
「気持ち悪いなお前・・・」
普段の訓練ではしないような不敵な顔の郁に声を掛けてきたのは二正の堂上だ。
「だって楽しみじゃないですか。見ててくださいね、自分が負けちゃうところ。」
ニッカと笑う郁の頭を軽く叩く。
「・・・大丈夫か?」
頭をさする郁に 行動と反対な言葉を落とす。この『大丈夫か』は今の痛みにではなく、体調に対してのこと。
査問終了後に毎回訊かれ、眠れていない郁の様子の時にも毎回訊かれる。もう、声色で分かる。
「大丈夫です。」
郁は笑顔で返事をしながら、進藤の集合の号令に弾けるように駆けていった。


戦闘靴での測定だ。正確な記録ではないが条件は皆同じ。各班整列し、郁と若堂上は最後だ。
「いいか、測定は1回きりだからな。」
進藤の合図でスタート地点に2人並んで立った。
走り終えた隊員達がレーン周りを取り囲む。
郁と若堂上は身体を軽くジャンプさせてから態勢を整えると、互いに自信のある顔を見合わせる。
そして 隊員達の見守る緊張感の中、スターターのやや勿体つけたスタートの合図に勢い良く飛び出した。

クラウチングスタートのタイミングはほぼ同じ。瞬発力は筋肉量の多い若堂上が勝ったように見えたが、前傾姿勢から加速に入るのは郁の方が早い。落ち着いたフォームはブレず、腕のスライドはこの1年 堂上から与えられた罰則の腕立て伏せが効いたのか、力強く振りも早くなっている。
前に向けた若堂上の視界の隅に 郁の影が入った。
速い。
しかしここで若堂上の負けん気が脚のハムストリングスに伝わった。リードを取られた若堂上が追い上げにかかるが、郁も負けじと失速しないように上体をコントロールする。
が 双方無理がたたって前のめりになり過ぎて、ゴールに向かって転がり込んでいった。

砂埃舞う迫力溢れる攻防に、オオ〜ッとどよめきと歓声が上がる中、重なる様に倒れ込んだ若堂上と郁は 酸素を求めて喘ぎながらも結果を訊く為に進藤の姿を探した。
「「ど、どっちっ・・・」」
しかしその目に飛び込んできたのは 鬼のような形相の二正の堂上。
「おーまーえーらーー!!」
2人は首を竦ませた。
従来の走りとは程遠い、崩れきった走りは怪我や故障を引き起こす。ここで怪我でもしたら、急な出動に対処出来なくなるのだ。
小言と拳骨を見舞わされしゅんとしていた郁も、やがて笑いがふつふつと込み上げてきた。
『郁と若堂上にガミガミと叱る二正の堂上の図』は滑稽で。次第に二正の堂上もバツが悪くなり、郁は他の隊員達と一緒に大爆笑となった。

「堂上が笠原叱ってると 堂上が昔の自分を叱ってるようにしか見えなかったけど、まさか本当に目にするとはな。」
「見た目のダブル堂上と中身のダブル若堂上ときたもんだ。」
笑われる若堂上は不本意だ。
「いいえ、俺 どっちとも違いますよ!」
「いやいや、ソックリ!」
わいわいと騒がしく賑やかな場となった。

場を離れ、お腹を抱えて涙を流すほど笑う郁に、二正の堂上はムッと眉間に皺を寄せた。
「笑い過ぎだ。」
「だ、だってっ!っくくく、、」
小牧バリの上戸に陥りながら 指で目尻の涙を拭う。
「こんなに笑えたの、久しぶり。」
「・・・」
そう、査問が始まってからというもの、心の底から笑う なんてことは1度もなかった。
強がり。カラ元気。痩せ我慢。
王子様や教官も耐えたという査問は辛くて苦しくて、笑い方を忘れてしまったのかと思えるほどだった。
でもここは居心地が良い。厳しい追求をする査問員達の重圧や、疑惑と好奇の視線に晒される針のむしろのような寮内の状況からも開放される。しかもここには心強い仲間がいる。真っ先に信じてくれた教官がいる。
その温かみを噛み締める郁の頭に堂上の手が乗った。

「笠原一士、もう1度!決着をつけましょうよ!」
皆に揉みくちゃにされて輪から出てきた若堂上が走ってやってきた。
結局判定出来なかったらしく、納得いかない若堂上が再戦を申し出たのだ。
「よーし、いいわ────」
「やめておけ。」
堂上は 立ち上がろうとした郁を、頭に置いていた手のままに押さえ込む。
「お前も、本調子じゃない相手と勝負したって自慢にもならんだろが。」
そう若堂上に投げかけた言葉に郁は反論する。
「え?あたしは大じょ・・・」
「大丈夫、か?」
全力疾走した足はプルプルと震えていた。このところの精神的なダメージは身体にも影響が出ているようだ。
「それに午後は・・・。」
「あ・・・」
笑顔だった郁の表情に暗い陰りが落ちた。
「?。どういう────」
「お前には関係ない。詮索は無しだ。」
堂上は踵を返し、他の班長に敬礼をしてから庁舎に向かった。郁は若堂上から視線を落として「ごめん」と呟くと 堂上の後を追った。
この日 堂上班は午後の訓練を切り上げて名目上デスクワークとなる。
「なんでだよ・・・。」
何も聞かされていない若堂上は、1人グラウンドに取り残された。



09:55  |  図書戦  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 | 2015年05月14日(木) 11:48 |  | コメント編集

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

 | BLOGTOP |