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2015'09.01 (Tue)

「堂上、2人」6

こんにちは。
夏休み終わりましたよー\(^ω^)/。
記録的に暑かった夏の締めくくりが、気温急降下な雨続き。涼しいを通り越して寒くてファンヒーター焚いてる軟弱者です・・・。
我が家は子供3人バラバラな始業日なので、だらだらと始まった2学期です。暫く婆さんの羽根を伸ばしてから(留守番頼むこと多かったですからね)、母ちゃんも夏休みを!。この秋は色々目白押しで、その上色んな情報や繋がりも増えてきていて(≧∇≦)。
気分の軽い夏休み明けとなっています。

コメントお返事すっ飛ばして更新です。連載の書き溜めを仕上げてたら長め・・・ちょっとだけね。もう少し続きますので、気長に覗いてみて下さい。
↓こちらから どうぞ



【More】

「堂上、2人」6


その日若堂上の午後の業務は事務処理だ。何故か1人引き離されて膨大なデータ入力を任された。
堂上二正の親戚というのは建前。下手に他隊員と接触して不都合があっては後々問題だ。若堂上が未来の大きな出来事を知る事で過去が変わりかねない。特に────


若堂上は会議室を宛てがわれ、1人黙々とノートパソコンと対峙させられた。
「雑用係かよ。」
半分は玄田が喜々として押し付けてきたものだが、どっさり山積みのデータは地道な入力でやっつけるしかない。しかしこの思考を鈍らせる作業は、正直ホッとする時間にもなった。
いきなり未来の世界に飛んできたが一体いつ帰ることができるのだろう。そもそもどうしてこんな事態になったのか。初めは楽しんでいた状況でもあったのだが、1人になるとどうしても疑問と不安が頭を擡げてくる。その不安を打ち消すようにカタカタと数字を打ち込む。
でも。
クッと笑いが。午前の訓練光景を思い出す。
「あんなことでムキになる女は初めてだな。」
男ばかりの生活の中でも、時折声をかけて来る女はいる。しかししなだれかかってくるような女は好みではない。女を知らないとは言わないが、これまでとは違うタイプであるのは確実だ。
「・・・ま、自分には関係ない。」
過去の世界に戻るのが優先だ。この世界の人物に深入りするつもりはない。
────深入り?。
ぶんぶんと頭を振って再度作業に取り掛かる。努めて無心に。


若堂上は 仕上げた書類とノートパソコンを持って特殊部隊事務室に戻った。ノートパソコンは堂上の机の上に。どうやら不在らしく、堂上班の姿はない。そして書類を手に隊長室の戸をノックしようと前に立った。

『・・・若干 追及の手が緩んだ印象だな。』
『あれだけ隠蔽の関与をゴリ押ししてたのが、なんだか変なんです。』
『笠原、もう少しの辛抱だ。状況が変わりつつあるかもしれん。』
笠原?。漏れ聞こえる会話がつい気になって、若堂上はそのままノブに手を掛けた。

カチャリ

その音に中にいた者が一斉に振り向いた。玄田隊長と、いないと思っていた堂上班の 計5人だ。二正の堂上はギョッとする。
「?何の話で────」
「何でもない。勝手に入って来るな!」
訝しむ若堂上の問いを遮ると、二正の堂上は若堂上の腕を掴んで廊下まで引っ張っていった。
「いいか、何度も言うが、ここでは何も詮索するな。」
「別に詮索なんて!」
若堂上は語気を強めて反論したものの、戸の隙間から見えた郁の顔が憔悴しているようで気になった。午前勝負をした時の様な生き生きとした表情はかき消されて見えたのだ。
そう言えば、寮で見かける郁の表情はいつも冴えない。デカい体を小さくして、他の寮生からも1人外れている姿もよく見られる。
いつも大勢の中心で騒いでいそうなのに。
館内警備を一緒に回れば、児童室に顔を出した途端 郁の周りにはたくさんの子供達が屈託なく寄ってくる場面に遭遇する。子供からお年寄りまで 誰にでも好かれるタイプだ。ただ 真っ直ぐ過ぎるとは言ったもので、よく新聞の記事に吠えている。明朗闊達、そんな姿が本当であるだろうから、肩を落とした後ろ姿が気に掛かった。

若堂上の腕を離して どかりと自席に座った二正の堂上を視線で追うと、そこに入り込むのは笑顔の郁。
笑顔?いや、明らかに無理してるじゃないか。
そんな彼女に気付かないのか、この男は。未来の自分にイラつき不満を募らせる若堂上は、大きな音をたててドアを蹴ってからその場を離れていった。

「うわー、懐かしい光景。」
小牧がクスクスと笑うと、堂上は眉間に皺を寄せた。
キョトンとしたのは郁だ。
「どうしたんですか?もしかして昔の教官は事務仕事が苦手でイラついちゃったとか。」
仕上げて置かれた書類を郁がパラパラと捲る。
「・・・完璧じゃん。やっぱり若い時から優秀だったんですね。つまんない。」
当たり前だろ、と手塚が呆れる。
バツが悪いのは堂上だ。6年前の自分は 見れば見るほど未熟で短絡的な行動をする出来損ないの男だ。
その性質が組織にマイナスに働く行動を取ることもあると知って、使える自分になる為に必死で切り捨てたつもりの俺が目の前に現れた。
「なんて羞恥プレイだ。」
居た堪れない堂上は頭を抱えた。



夜の、寮の共有スペース。
若堂上はトイレに行った帰りに自販機でビールを買っていた。
そこへ入って来たのは風呂上がりの郁だ。もう入浴時間ぎりぎりで人の少ない時間帯だ。別段帰寮が遅かった訳でもないのに まるで人目を避けているかのようだ。
そしていつもの違和感。郁が入って来ると、数人居合わせた寮生がヒソヒソと耳打ちする。
「さっさと正直に話せばいいのに。」
「女だてらに教育期間中にも問題起こしたくせに、特殊部隊入りしていい気になってるのよ。図書を隠蔽して査問に掛けられてるのに、よくのうのうとしていられるわよね。」
今まで入って来なかった話が聞こえて、若堂上は耳を疑った。咄嗟に真後ろで噂話をしていたその女の寮生の手首を捕まえた。びっくりした寮生が若堂上の顔を見て驚愕する。
「きゃ、な、え?、ど、堂上二せ・・・?」
「おまえ、一体どういうつもりでそんなデマ!」
人が少ないとはいえ騒ぎになる。
「や、だって・・・離し・・・っ」
「いい加減なこと言ってると────」
「やめて。」
真っ青になっている寮生との間に割って入って来たのは郁だ。そっと若堂上の手を外させる。
一緒になって噂話していた寮生に震える寮生を引き渡すと、小さく「ゴメンね」と女子寮へと促した。
「待てよ!、そんな有りもしないこと噂されといて黙ってるのかよ!」
寂しそうに寮生の背中を見送っていた郁が、驚いたように若堂上の顔を見た。
「な、何だよ・・・」
郁に見下ろされるように凝視されて、若堂上の勢いは削がれた形になった。
「やっぱり堂上教官なんだなって思って。」
微笑む郁にドキリとしつつ、若堂上は腹を立てた。
「俺は!」あんなのと違う。
ハッとなる。まだ共有スペースには寮生が数人残っていて 好奇の目で2人を見ているのだ。自然、共用サンダルを引っ掛けて寮の外に出る流れになった。

なんとなく。少し距離をおいてぶらぶら歩く。気持ちの良い風が吹く夜だ。
「教官もね、最初に ものすごい剣幕で隊長に噛み付いてくれたの。有り得ないって。」
「そんなのっ・・・当たり前だ。」
査問会に呼び出されているのが事実ということは、図書隊員として問題のある行動をしたか、もしくは危険な思想を持つ者として内部告発なりされたのか・・・重大な規則違反を犯したか。何れにしても若堂上の持つ『笠原郁』の人物像からはかけ離れた措置のされ方だ。多少短絡的なところはあるが、図書隊員として不適切な人物ではない。特殊部隊員としても何の過失があるようでもない。ましてや図書を隠蔽するなんて裏工作するようなタイプには見えない。(今は)年下が言うのもなんだが、危なっかしいところはあるが、純粋に本を守る事に情熱を燃やす意欲のある一隊員として、褒められることはあっても貶されることはないはずた。それでも出頭させられる事態に陥ったとすれば、虚偽の申告があったからだと考えるのが妥当じゃないか。
若堂上はぎりぎりと拳を握り、怒りが込み上げてくるのを抑えられないでいた。アイツは何をやってるんだ。
「大丈夫なの。・・・大丈夫だから。」
静かに笑む郁の、まだ半乾きの髪が風に揺れる。これが密室で糾弾され、精神的圧迫を受け続けている者の顔だろうか。
「なんで・・・なんでそんな無理して笑う。」
1人耐えるなんて、大の男でも辛いはずなのに。
郁は若堂上の苦った表情に目を細めた。
「あたしには仲間がいるから。」
庭石に浅く腰掛ける。
「信じて支えてくれる、力強い仲間がいるから。」
そして、強がりを言いたい人がいるから。郁は足元を見て心の中で呟いた。
若堂上は 握った拳を無理やり広げ────
目の前の郁の頭に ポンとのせた。
「「・・・・・・」」
沈黙のあと、若堂上が慌てて飛び退いた。
「わ、すまない。年上に対して。つい・・・」
「ううん?。ありがとう。」
郁は撫でられた感触を確かめるように頭に手を当てた。
「教官の頭ポンは、昔からなんだ。」
叱る時も褒める時も、堂上はマイルールのように頭に手を置く。
「えっと・・・妹が、いるから?かな・・・いや、どちらにしても失礼した。」
「どうして?。あたしはいつもコレで元気を貰ってる。容赦ない拳骨も、ただの挨拶でさえ。」
は?何を気軽にエロおやじ。
「俺はあんなのにはならない。部下1人守れない、そんな男になってたまるか。」
一瞬だけ。
若堂上は郁を引き寄せ 肩を抱いた。
「くそっ、殴ってやる!」
「え?は?」
混乱する郁を置いて、若堂上は踵を返すと寮の中に駆け込んで行った。






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 | 2015年09月04日(金) 20:48 |  | コメント編集

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