All archives    Admin

07月≪ 2020年08月 ≫09月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031

2015'09.28 (Mon)

「0劇場」(8の別ver.)

こんばんは。
連日雨続きだった中、珍しく隙間が晴天になった日に ちび達小学校の運動会でした。直前まで降っていた雨。昔のグラウンドであれば、水たまりの水を雑巾やスポンジでバケツに集めることから始まるところが、今どきは水捌けの良いこと!。何の支障もなく開催されました。
月曜日である今日は振り替え休日だったので、公園でザリガニ釣りをしたりして 久しぶりの秋晴れを堪能しました。内心 秋冬物の洗濯をしたかったんだけどね~。ちびはゲーム派なので、外遊びに連れ出さないとさ。で、月末だからリーズナブルに過ごしました。
その間にポチポチと。
こちらは0シリーズのお話の別versionになります。時期は県展直前で、シリーズ8と重なります。
0シリーズでは、堂上さんは郁ちゃんが王子様バレした事を知っている、という設定です。index5に収納されている不定期連載の隙間、のつもりがこんな形に(笑)。続きではないのですが、宜しければ読んでやって下さい。
↓こちらから どうぞ

【More】

「0劇場」(8の別ver.)


防衛部の事務室に2人の女子高生が並んで座らされている。俯いた顔面は蒼白で。しかし歪んだ口元は不満な気持ちを隠そうとしていない。どこかふてぶてしさが醸し出されている。
その傍らに立つ郁は 複雑な気持ちでいた。


雑誌コーナーで不自然な動きをする2人を見つけたのは、巡回中の郁だった。バディの堂上も目視で確認し、職質をかけることにした。
1人は周りを警戒するように忙しく視線を巡らせている。もう1人はその背中に隠れるように身を丸めていた。
ビリッ。クシャ。
極々微かに聞こえてきたのは 嫌な予感そのもので。でもまさか、と咄嗟に少女達の元に走った。
「あなた達、何やってるの!?」
郁の声掛けに振り向いた少女達は驚愕の表情を貼り付けて後ずさった。どん、と背中に当たったのは 逃げ道を塞いでいた堂上の体だ。
少女の手から取り上げた雑誌の見開きには、笑顔のアイドルが微笑んでいるのに、雑誌のノドの部分が僅かに破れせっかくの笑顔に皺がよっている。
「話を聞こうか。」
堂上の声に竦んだ少女達を、郁はそっと背中を押して防衛部に連れていった。

そんな彼女達の今の態度に郁は困惑している。最初はおとなしく椅子に座っているだけだったが、暫くして2人顔を見合わせると揃って大きなため息をつき、不貞腐れるように脚を組んで体勢を崩したのだ。おもむろに携帯を取り出したのでやんわりと諌めると、チッと舌打ちまでする。その態度に呆れるしかない。
防衛部の担当に経緯を報告し、調書は任せることにした。
堂上と郁は巡回に戻るべく事務室を後にする。廊下に出て図書館に向かう途中、郁の歩みが止まった。
「あの子達・・・」
沈んだ声の郁に堂上が言った。
「あのアイドルのピンナップが欲しかったんだろうな。いらない情報も多い雑誌を丸ごと買うのが惜しいんだろう。」
「だからって、好きなアイドルの写真をあんな乱暴に取り扱うんでしょうか。本当は綺麗なまま保存したいんでしょうに。」
香坂大地の特集本が出版される時に懸念された事項そのものだった。ファンだったら図書館からは盗まないんじゃないか。大切な写真を傷つけたりしないんじゃないか。好きなら自分のお小遣いで買うのが当然なことだと思っていた。『どんな形でも 手に入ればいいって奴』を警戒しなければならないなんて、やり切れない思いがした。
「もっと早く声を掛ければ良かった。そうすればあの子達があんなことしないで済んだのに。」
「・・・今やらなくても 別の機会にするかもしれない。その辺は警察の少年課あたりの仕事としたもんだろう。」
「それでも!。」
郁はぐっと拳を握った。
「それでも『今』の犯罪を未然に防げたかもしれない。」
別に犯人を捕まえる事だけが仕事ではないのだ。犯行を思い止めさせる事だって大切なのに。
「あの時は・・・」
教育期間に出くわした雑誌の切り取り犯。犯人の身柄を拘束せずに油断して、堂上に身代わりのように怪我をさせた。見付けたのは現場で、確かに現行犯でなければ確保は出来ない。でも今日の彼女らはまだ高校生だ。指導如何では考え改めさせることだっていくらでも出来るかもしれないのに。
未熟だったあの頃は 犯人確保のことだけを考えていた。その確保さえ出来ていなかった自分。
警戒するということは、いろんな想定をしなければいけない。
「あたし、まだ考えが甘いのかな。教官から沢山教えて貰ってるのに。」
「────お前は・・・」
堂上の手が郁の左の頬に触れた。
「え?」
するりと撫でた後に掌で包み込む様に添えられて、郁は首を竦めた。
「そういえば愉快なほど腫れ上がってたな。」
あの時堂上に引っぱたかれた頬は痛かった。競技と訓練の区別もついていなかった事を 身を呈して教えて貰った。自分の至らなさを自覚したが、それでも。
「あの宣言には、正直やられた。」
「な、何をですか?」
くすぐったくて身じろぎするも、堂上の手を振り払うことはせず、何か宣言したかと記憶を反芻する。
「あ・・・」
思い出されたのは、堂上に防衛員に向いていないと断言された言葉を跳ね返す決意だった。
『あたし、辞めませんから!』
まだ王子様の正体が堂上だと分からずにいたあの頃。
「あの、既に本人に、言っちゃって、ましたね・・・。」
いつか会えたら、あなたを追いかけてここまで来ましたって言うんです!。
本人目の前にして早々に言ってたんじゃん。
先日 医務室で宣言したのが初めてではないのだ。
「あたしってば、何度も何度も・・・」
とんだ茶番だ。思い返せば面接時から。郁の顔は真っ赤で、そんな頬を堂上がさする。さすがに恥ずかしくなった郁が、その手から逃れようと後ずさった。
「意識せざるを得なかった。」
「え?」
俯けた顔を上げると、困った様に眉を下げた 自嘲気味な堂上が郁を見つめている。
自分から排除した部分をまっすぐに追ってきたあの時の少女。自分ではない男を慕っている感覚に苛立ちを感じたなんて認めたくはなかったが、再会してずっと胸が騒いでいたのも事実。
隠し通すつもりでいたのに。

「あの子達、反省してくれて、次は好きな人の作品を自分で買えるといいな。」
ぽつりと零す郁を、堂上は眩しいものを見るように目を細めた。
「考えが甘いのかもしれん。でもそんなお前のまっすぐなところは 昔から変わらず────」
小牧の言葉を自分が口にするのははばかれるが。
「抱きしめたくなるほどかわいいところだ。」
えええええええええ!
郁は声に出せない悲鳴をあげた。
くるりと踵を返した堂上は、そのまま歩き始めた。固まった郁を残して。
ハッと我に返った郁がその背中を追う。
「みんなが皆、お前みたいな人間ではない事は肝に銘じておけ。でないとあの高校生達みたいな心に触れる度に自分が傷つくだけだ。俺達が対処するのはそんな心の闇を持った相手だからな。」
「・・・はい。」
重なった背中を追いかける。郁は大きな堂上の背中を見つめる為に顔を上げた。
「文句なしで士長になったんだろ。胸を張れ。お前は成長している。それから────」
訓練速度の歩調を緩めた堂上だが、振り返ることなく前を歩く。
「俺に向けての宣言は 卒業宣言からが有効だ。」
あの鬼教官がどんな顔してこんなセリフを言ってるんだろう。だが ふと堂上の耳が赤くなっているのが目に入った。このところの堂上は 郁の想定外をいく。でも、やっぱり慣れないセリフに無理してるんだろうなと思うと、なんだか可愛くて。
ふと笑いが込み上げたところでぶつかった。堂上が突然立ち止まったからだ。
「受けて立つから 早く追いつけ。」
くるりと身体を向けると、郁を一瞬ギュッと抱きしめて耳元に囁いた。
「待ってるのは、上官の俺だけじゃないぞ。」
追い付きたい背中は尊敬出来る図書隊員であり、1人の男性であり。
「わ、分かってます。」
郁の答えに満足した堂上が 今までにない笑みをみせた。
あ、加速する。
郁の心臓は痛いほど早鐘を打った。
19:18  |  図書戦  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 | 2015年09月30日(水) 15:30 |  | コメント編集

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 | 2016年07月08日(金) 22:39 |  | コメント編集

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

 | BLOGTOP |