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2015'12.16 (Wed)

「堂上、2人」10

こんにちは。
暖冬・・・ですね。朝晩は寒いですが、いや、例年より明らかに暖かくて有難い。地球規模で悪い影響も多いとは思いますが、すみません、半径数メートルに関しては 「ワンコの散歩が楽」な点で有難いです。油断はできませんけどね。

さて、ほぼ書き上がって放置してあった連載の続き。ちょっと落ち込んでいたのもあって出せなくなってました(間違って消しちゃったハプニングもあったけど)。もうねー、いらんこと考えてしまって、いろいろ力不足なこれまでの作品達に申し訳ないというか、書きたい話と書ける話の格差とか、要は自信ないから急に勝手にモヤモヤしてました。←ってうじうじここに書きたくなくて更に放置|”-;) ←って今書いてるけど。←オイ
でも 毎日のようにチラホラ拍手いただけてることに元気をもらい、こんなんでも読んで貰える喜びもあって♡。欲張らずに楽しみます。幸い脳内は元気に妄想活動してるので 相変わらずですのん(*^^*)♪。

更新です。「9」を分けた話なので、進展はありません。
↓こちらから どうぞ




【More】

「堂上、2人」10


午後戻った2人には、何事もなかったように業務が待っていた。
────とりあえず 投げちゃったことは謝らなきゃ。
しかしイベント警備が近い為に各班準備に取り組むモノが多く、郁は堂上に話しかけるきっかけが作れない。からかわれるネタにされるのも気まずいので、出来れば進藤はじめ 他の隊員達の前では避けたいが、そのタイミングはなかなか訪れなかった。
幸い日報を出す頃になれば事務室にはもう二正の堂上と郁の2人だけ。チャンスを逃すまいと 郁は意を決して机に向かっている堂上の横に恐る恐る立った。
「堂上教官、あの、今日は・・・」
「投げたことなら気にするな。俺がいらん詮索をした。」
堂上は手を休めない。郁の方を向くこともなく、姿勢を崩さないまま答えた。
「でも・・・」
きちんと謝りたい。そう思って再度声をかけようとした郁に、つと 堂上の視線が向けられた。
その 目が合った一瞬だけで 郁の身が固くなる。それが堂上にはまるで怯えたような表情に見え、すぐに郁から視線を逸らした。

「笠原一士。」
呼ばれて振り向いた郁の肩から力が抜けたのが分かった。
声を掛けたのは 書庫に資料を返して戻って来た若堂上で、郁が堂上と事務室に2人きりだった事に気付くと ムッとした表情を隠さなかった。
どうやら敵意あらわな若堂上と 助け船を見つけたような様子に見える郁に、二正の堂上は軽くため息をついて 脇に置いてあった郁の日報に判を押した。
「笠原、帰っていいぞ。」
日報を手渡した堂上は机に向かい直してパソコンを立ち上げた。まだ残業するのだろう。
「あ・・・」
郁はタイミングを失ったと感じて躊躇したことを後悔し、日報を握りしめて唇を噛んだ。目が合って、どうしても気後れしてしまったのだ。実はまだ心の整理がしきれていない自分がもどかしい。
「笠原一士、帰ろうぜ。」
「う、・・・うん。」
郁はゆるゆるとした動作で日報をファイルに閉じて、促されるままに事務室を出た。戸を閉める際に見た堂上の背中は振り向かなかった。


パタンと閉じられた戸の音を聞いて、堂上は今度は深いため息をついた。


────
やはり 王子様には敵わないのか。

ついそう思ってしまった自分に呆れて笑う。何に張り合ってるんだか。
手塚慧の件で これまで蓋をして抑え込むつもりだった思いが頭をもたげてきたところに現れた昔の自分は、やはり未熟で出来損ないの男だ。奴の姿にあの頃の自分がしでかしたアレコレを否が応にも思い起こされて 恥ずかしいことこの上ない。
元々1度失敗した事は2度と繰り返さない、それが信条だ。
あの時、少女だった郁を助けたかったことに嘘はなく 決して後悔はしていないが、自分を冷静に見つめ直すきっかけになった。軽率で感情任せの行動は自分の欠点だ。その欠点を克服するべく 理性で考えて行動を起こす術を漸く手に入れたと思っていたのに。
────今の俺では 認められないのか。
『その本屋さんにいたのが堂上教官だったら、図書隊員になりたいとは思いませんでした!』
いつかの言葉が胸に刺さる。
「だろうな。」どうしたって俺は正義の味方ではないのだから。
大体郁の脳内の美化された『憧れの図書隊員』は最初からいなかった、はずだ。決して追いかけて来られるほどの男ではない、ただの欠点だらけの図書隊員。しかしその欠点を欠点だと思わず真っ直ぐに憧れる郁には、未熟であっても「あの三正」である昔の自分に自然と惹かれるモノがあるのかもしれない。たとえ王子様と知らなくても。
『あの人が好きです。』
涙ながら本人目の前に告白するヤツがいるか。
しかし自分に言われたわけではないその言葉に────勝手に振られた気分にさせられたなんてのはどうかしてる。己の背中が及ぼした影響を戒めに 上官であることに徹するつもりで郁には鬼教官として対峙してきたのだから。
失望させたくない。なのに・・・
郁の中での自分の存在が気になるだなんて、今更だ。
そして気付かされる。自分がどうしたいのかを。
────


「・・・?うわっ!。」目の前の画面を確認して机に突っ伏した。
珍しくデータ入力場所を間違えており、堂上はバリバリと頭を掻いた。



庁舎から寮に向かう。
外に出て庁舎窓を見上げた郁に 若堂上が声を掛けた。
「食堂行く前にひとっ走りしたいんだけど。」
「あ、うん。いいね。」
今日は館内業務がなかったこともあり、戦闘服を着用していた。寮に帰るにしてもまだ日は落ちきっておらず、グラウンドは充分使える。
入隊間もない若堂上は、訓練後にも自主訓練を欠かしていなかったようだ。そんなところは想像通りかも、と郁は笑顔で頷いた。

軽くストレッチをし、ダッシュを繰り返す。周回し 暫く動いた後、一連の動作でクールダウンする。
日が落ちてくると影が濃く伸びてくる。郁は芝生に座ってグラウンドの先に立つ若堂上を改めて眺めた。憧れの王子様が年下で現れたというのは複雑だが、夕陽の逆光に浮かび上がるその背中は、6年前のあの時見上げた精悍な背中。背丈は自分より小さいのに、大きく見える背中だ。
自分の作り上げた王子様は 顔も名前も背格好も────要するに何も覚えがないままに、勝手に自分より大きな男性だと想像していただけ。
「思い込みだったんだな・・・」
ポツリと呟いた郁の声に、若堂上が振り向いた。
「?何か・・・」
「いやいやいや、何でもなくて。」
郁は両手を伸ばして全力で否定の手を振った。急に振り返られると心臓に悪い。顔が火照ったが きっと夕陽で誤魔化せている、と思う。
それでもじっと見ている若堂上の視線に耐えられなくて つい話を振ってみた。
「もしもだよ?・・・もし 昔1度あっただけの女の子にずーっと想われてたと知ったら、どう思う?」
あまりにも唐突過ぎる質問をしたかと慌てて郁は肩を竦めた。
「あー、待って。答えなくていいデス。えーと、さて、お腹すいたなー!。」全くもって関係ない思い付きなだけの話だから、と必死で言葉を濁した。
事情を知られていないとはいえ いくらなんでも本人に訊くことか?。郁は立ち上がってお尻の芝を落としながら慌てて食堂に向かおうとした。

「成長した自分を見てもらいたい、かな。」
「?」
振り返った郁に 続きを少々言い淀んだのは、ガラじゃないと思ったからか。ぷい と横を向きながら若堂上は続けた。
「さっきの答え。・・・次会ったときにもっと、その・・・認めてもらえたなら 男冥利に尽きるだろ?。」
何なんだ このくすぐったさは。郁は目の前の男を凝視した。見慣れたはずの顔で 絶対言いそうにない言葉を口にする生き物に頬が緩む。
若堂上はそのニヤけた郁に気付いて眉間にシワを寄せた。
「もう言わん。」
機嫌急降下なのは、多分かなり無理をして言葉にしたからであろう。その表情には大いに見覚えがある。
「・・・そうだね。」
昼間の宣言もそうだが、若堂上が自分に厳格であり常に前に進もうとしているのは、今の教官でも変わらずに続いている。それは郁への厳しい指導でも感じ取ってきたことだ。やっぱり2人は間違いなく『堂上篤』。

郁自身、助けられてから 王子様に追い付こうと必死に勉強もしたし、入隊してからも必死に訓練して、もうあの時の女子高生のままではないはずなのに、「憧れの王子様」だけはそのままで。
常に成長してきた堂上に比べて、自分の気持ちが6年前から一歩も動いていなかったことを思い知った。
そこで、王子様の正体を急に知って混乱していた頭は、色々自覚してきたら更なる混乱へ。だって実物が目の前にいたら、「憧れ」は直ぐに「好き」にスライドする。その上どさくさに紛れて昼間何だかあったようななかったような。

────あたしはどっちが好きなの?

あれこれ思い出して一気に挙動不審にならざるを得なくなった郁の内心をよそに、若堂上は真っ直ぐ見詰めてきた。
「提案なんだけど。」
「は!はいぃっ!」
「飯、外に出・・・ませんか?」
語尾だけは後輩らしく聞こえた若堂上に、郁は思わずプッとふき出した。そして飛び跳ねた心臓を無理やり閉じ込める。
「初めて出来た後輩にお姉さんが奢ってあげますよ~。」
「うわ、年上ぶってる。」

頑張って落ち着こう。

郁と若堂上は 着替えてから出掛けることにした。


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 | 2015年12月17日(木) 02:39 |  | コメント編集

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