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2016'01.17 (Sun)

「リサーチ」

こんにちは。ほぼ全快している英香です。全快していないのは移した方の娘です。無理矢理部活で動いているから怪我までしました。アカンやんヽ(`Д´)ノ。

結局カミツレデート記念日には何も食べられなかったので(既にイベント化されているww)、今日出張から帰ってくる父ちゃんのお土産にチーズケーキをリクエストしました(多分スフレとか分かんないだろうから細かくは指定していない)。

更新です。半分は去年の内に書いてあったもので、15日に合わせてカミツレデートと絡めようかと思ったのですが、バタバタしてて過ぎちゃったし←。通常更新です。期間は恋人初期。
↓こちらから どうぞ

【More】

「リサーチ」


午前中の書庫業務は多忙を極めた。
しかし郁ももう新人の頃のような足でまといになる様なことはない。郁の頭にも 分類法や書架配置が刷り込まれ、端末から吐き出されたリクエスト帳票を手に 休む間もなく出納処理をする。同時に返納図書のチェックや配架、及び電算処理もこなし、十分戦力として動けるようになった。
本来ならば1日書庫業務に入るところが、シフトの関係で午後は佐藤班と交代だ。昼のリクエストが切れたタイミングで 堂上班は地下書庫の階段を上がった。
「急な変則業務になったがご苦労だった。時間もあるし、今日は外に食べに出るか。」
堂上の入院中は、人数構成的にも訓練や図書館業務は他班と合同 もしくは融通をきかせて貰うこともあった為、現在シフトバランスを取っているところだ。
堂上の珍しい提案に、閉塞空間にいては開放感を味わいたくもなるから たまにはいいかと、皆が賛成した。
「あ、あたし いいお店知ってます。先日オープンしたばかりのカジュアルレストランなんですけど、雑誌にも取り上げられてて評判いいみたいですよ。」
女子寮でも話題のレストランだ。
「柴崎も誘っていいですか?。サラダバーが充実していて、行ってみようって昨日も話してたんですよ。」
郁は足取り軽く階段を上りきるとカウンターに向かった。

すると柴崎のいるカウンターに見知った女性。こちらを見て 控えめながらもぱっと笑顔を見せた。
「あ、毬江ちゃん!」
大学生になった毬江は見るたびに綺麗になっていくようだ。もう小牧と並んでもお似合いの大人の女性。
小牧は軽く手を上げた。
「久しぶりだね。」
毬江は小牧を見上げるようにしてから肩を窄める。
「やっとレポートの目処がたったの。最後に付ける資料を相談したくて来たんだけど・・・。」
仲間内では声を出すことに戸惑うことはなくなった。
暫く会えなかったから、毬江の遠慮がちだが甘い視線に小牧は応える。
「いいよ。資料取り寄せたら 食事にでも行こうか。」
もちろん毬江の目的は資料だけではない。それは誰もが察せられることであり、ここで『毬江ちゃんも一緒に』と誘わないのが正解だ。
「じゃあ俺達、別の店に行くから。」
小牧は毬江を促して、まずは彼女の手元のファイルに目を通す。
テキパキと目的の書架を探して 2人消えていった。
その姿を見送りながら柴崎は訊いた。
「あら、何処かに行くところだったの?」
「うん。そうそう、昨日話してた新しいレストラン、皆で行ってみようかと思って。柴崎も一緒に行こうよ。」
郁はカウンター内の柴崎に身を乗り出して誘った。昨日の今日だ、どのレストランのことを言っているのかは分かった。
「いいわね。でも────」
柴崎は手塚を仰ぎ見た。
「手塚、あんたコッチを手伝ってくれない?」
どっさりと積み上げた図書カードの控えの山。
「今日 担当の子が休んじゃって入力が滞っちゃってるのよ。」
「そんなこと・・・」
手塚の声に郁の声が重なる。
「え、大変じゃん。あたしも手伝うことない?」
「いらないわよ、手塚がいれば十分。あんたはしっかり味のレポート頼んだわよ。」
柴崎は手塚の腕を取ってカウンターの中に引き込む。
「おい、なんで俺が────」
抗議しようと声を上げかけた手塚が黙った。柴崎が手塚の腕を抱き込んで椅子のところまで誘導するからだ。下手に暴れると肘が柴崎の胸に当たる。大人しく椅子に引き下ろされるとどかりと座った。
「ほら、付き合いなさいよ。じゃないとあたしのお昼休みが取れなくなっちゃうじゃない。」
勝手な言い草に呆れながらも ついキーボードに指をかけて従ってしまう。
そんな手塚を見て郁は申し訳なさげな顔をした。
「え、でも・・・」
「行くぞ。」
1人 2人と抜けた堂上班は、もう郁と堂上だけだ。堂上が構わずカウンターを離れていくのを、郁はあたふたと追いかける。くるりと振り向けば、柴崎が早く行けとばかりに手を振っている。
確かに郁では手塚ほどの働きは出来ない。へにゃりと眉を下げてから、遅れを取り戻すように堂上の元に歩を進めた。
「どうします?みんないなくなっちゃったし、食堂で済ませましょうか。」
「かまわん。アイツらが勝手に気を使ったんだろう。」
「へ?あ・・・」
郁は頬が赤くなるのを感じながら、躊躇していた足を堂上に向けた。

班内のカップルだ。いつでも顔を合わせていられるとはいえ、職場では上官と部下。退院後の堂上が、不在にしていた穴を埋めようと残業がちなのは皆知っている。
手塚などは 初めは戸惑いがあったようだが、もう普段通りに接してくれているから感じなかったが、そんな成立間もないカップルを気にかけないではいられないのだろう。
「へへ。」
「なんだ・・・」
「デートだ。」
「・・・あほう。」
ここは素直に喜ぶところだ。部下の位置から一歩近づいて隣を並んで歩く。見れば堂上の顔もいつもより穏やかだ。恋人になってこの空気を知った。暖かくてちょっとくすぐったいような、この距離が郁は大好きだ。


「うわ〜」
目当てのレストランには長蛇の列が出来ていた。さすが雑誌に取り上げられただけはあるが、ほぼ女性客。
「これ、待ってたらお昼休憩終わっちゃいますね。」
意気消沈している郁をぺしりと叩いた。
「また来ればいいさ。夜は夜で全く違う雰囲気が味わえるそうだからな。」
え?。
サラリと言った堂上の言葉に 郁の顔が上がった。既に堂上は別の方向に歩き始めている。
雑誌の紹介では、ランチにはサラダが充実していてヘルシー志向の女性に人気があり、ディナーには種類豊富なカクテルとコース料理主体に切り替わり 恋人同士にお薦めとあった。
なんで知っているんだろう。
不思議に思いながら、乾いた落ち葉が風に吹かれてカラカラと音をたてて舞い転がる路を 堂上について歩いた。
「まあ、この辺りで・・・」
突然止まった堂上の背中に郁がぶつかりそうになる。見ればちょっと洒落たレストラン。
「あ」
堂上が入ろうとした店の前で バッタリ出会ったのは、先ほど別れた小牧と毬江だ。
「どしたの?」
堂上達はオープンしたての店に行ったのだと思っていた小牧の問に、バツの悪そうな堂上が答えた。
「混んでたからコッチに来たんだ。」
カランとドアチャイムを鳴らして店に入った。
「いらっしゃいませ〜」
元気な店員の声が響いた。
「何名様でございますか?」
ここは別々にするべきか。せっかく毬江が会いに来たのだ。

「ちょと、なんでみんな揃ってるのよ。」
聞きなれた声が後ろから聞こえてきた。次に入ってきたのは手塚と柴崎だったのだ。6人が顔を見合わせる。
「賑やかなランチになりましたね。」
ふわりと笑った毬江の顔にみんながつられた。
「6人でお願いします!」
郁は店員と同じく元気な声で申告した。
元々みんなでランチに行こうと誘っていたのだ。やはり堂上班が揃っていればコレは自然な成り行き。
「かしこまりました。」
店員がテーブルを寄せて準備をした席に案内された。
「(なによ、せっかく気を利かせてあげたのに 2人っきりでデートを楽しめば良かったじゃない。)」
柴崎は郁にコソっと耳打ちしたが、郁は満面の笑みで首を横に振った。
「いいよ、楽しいし。ここも美味しそうだね〜。それに多分────」

みんなの後ろについて席に向かう小牧が、前の堂上に囁いた。
「(早速リサーチ通りに行動している班長が可愛いなぁ〜)」
堂上がギロリと小牧を睨む。
先日堂上の部屋にビール片手に訪ねた時に、普段読まないような雑誌がベッドの上に転がっていたのだ。ピンときた小牧がつつけば、少々躊躇しながらも 2人で出掛けるのに良い店を探していると相談を受けた。紹介したうちの1件がこの店だ。
「(まさか かち合うとはな。)」
肩を竦めた堂上が郁を見やれば、楽しそうに毬江達と話している。今日のところはコレでいいのかもしれない。小牧もそう思ったのか頬が緩んでいる。
「(ま、オープンした店はノンアルも充実してるみたいだし、笠原さん誘うには夜の方が雰囲気いいって言ってたもんね。その後の方がいろいろチャンスが────)」
そう言った小牧の足を踏み付けた堂上の耳が赤い。

長い上官部下の関係から恋人へ。プライベートでは境界線が変わってきてはいるものの、小牧のようにどうにもスマートには移行出来ていない。郁には余裕のあるように見えても、そこは柴崎曰く朴念仁たる所以だ。
それでも自然と郁の前では甘い仕草で翻弄する。あとは・・・


後日2人きりで出掛けたのは、ランチには行けなかったレストランでのディナー。最初の一杯は軽いアルコールで、後はカラフルなノンアルコールのメニューを楽しげに目を輝かせる郁を堪能する。
「夜に来て正解でしたね!」
「たまたまだ、たまたま。」
帰り道は、堂上の密かな努力の賜物だった。


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 | 2016年01月18日(月) 01:20 |  | コメント編集

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