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2016'03.14 (Mon)

「月を仰ぐ」2(リク7)

こんにちは。
あれ?雪が降りましたよ(´・・`)。この寒さを越えれば春が来るらしいのですが。
さて、連日投下した宝物はいかがでしたでしょうか。今やたくさん書き手さんのいらっしゃる世界ですが、とても大好きな書き手さんの1人に書いていただけて嬉しいです。感想は転送致しますのでお気軽にどうぞ´ω`)ノ。

さて、自分の連載も進めたいところです。リアルがじわじわ押し寄せて来ることを理由に遅くなっています。決して忙しいわけではなく、、、(*・ノ3・)oO(根を詰めるのがメンドクサクナル病←)
老化の始まりとも云われるので、コレではいかん!と。前頭葉を鍛えるのに 創作ってかなり有効なんですよね。いい趣味持ったと思いますので、少しずつ_φ(・∀・ )♪。御付き合い頂けると更に嬉しいです。
久しぶりの自己更新。内心No.にしておけば良かったと思いつつの中編になります。
と、ちょっとびっくりΣ(゚ω゚ノ)ノ。前回から一ヶ月半も空いてるじゃないですか!。忘れ去られてる気しかしませんが・・・。
↓こちらから どうぞ

【More】

「月を仰ぐ」2(リク7)


稲嶺が帰宅したのは6時を少し回ったところだった。
運転手と介助役として送迎して来た小牧・手塚組と警護の交代をする。

先週、図書基地の監視をしている良化隊員を組み敷き、新世相の折口が突撃レポートするという作戦を決行したところだ。緒形副隊長もなかなか思い切った指示を出すが、普段玄田の無茶振りに慣れている特殊部隊にとって この極小作戦はお手の物。復帰した進藤のリハビリを兼ねた電動エアガンの試し撃ちもできるとしたものだ。もっとも 進藤の腕と後方支援部への確固たる信頼があってこその作戦だ。それが今後を見据えての作戦でもあり、結果出版界で共有できる、良化法関系の事態を充分示唆する記事の状況証拠を得られて成功したのだった。
手塚にとって尊敬する上司の1人である進藤の復帰は心強いものがある。
「────って、おい 聞いてるのかよ。」
「へ?う、うん、聞いてるよ。タスクも賑やかになったね。」
出勤はしてきていても リハビリ中で狙撃練習の出来ない進藤の声はそれまで空元気だった。ムードメーカーでもある進藤の甲高い声が聞こえないタスクの面々は盛り上がりにかける。そんな進藤に後方支援部から新兵器が届き、水を得た魚の如く調子づいたのだ。さすが現金、というか。
怪我を理由に書類を回されていたのを断る理由が出来たからという訳では無いが、純粋にまた共に戦える事を誇りに思え、今日はその復帰にまつわるエピソードで珍しく饒舌になる手塚だったが、普段ならその手塚よりもはしゃぎそうな郁のノリが悪い。まるで話は耳に入っていないようだ。
「どうした、コッチで何か動きがあったのか?」
良化隊の目は新世相の記事等で図書基地に向いているはずだが、イレギュラーは想定済みだ。いつでも応戦準備はしてある。
「違う違う。大丈夫、ん、ちょっとお腹が空いただけ・・・。」
郁は思考を振り払うように頭を左右に振った。
「ぼーとしてるなよ。」
訝しげな顔をした手塚だったが、郁の背後に視線を移すと姿勢を正した。
「堂上二正。」
郁の肩がビクリと上がる。
「遅くなった。ミーティング始めるぞ。」
郁の背後から聞こえてきたのはやはりいつもの調子の堂上の声。当麻と少し話し込んでいたらしい。
始まったミーティングでは小牧からの基地内の報告を受ける。新世相の記事以降、関東図書基地で当麻を保護した事は全国の図書隊にも開示されて一層の警護強化がはかられる一方、諸々の団体やファンの反応があるという。
「先生宛のファンレターや応援レターが基地に届くようになって、セキュリティ対策でてんてこ舞いみたいだよ。」
不審物が紛れ込まれていないか、チェックに余念がないからだ。
「ま、もう一時期な程ではないけどね。相変わらず一般的には意識は低いからさ。その代わり不審者情報が多発しているのは知ってるだろ?。」
「業務部からの不審者の報告は受けているが、事件性の有無は微妙なモノだな。」
堂上の眉間にシワがよる。
幹部庁舎に当麻を保護しているというのが偽情報として流布してある。その為折口との極小作戦以降も良化委員会は基地周辺に遠巻きにだが監視を貼り付けたままだ。
良化委員会との睨み合いが続く中、何か情報を得られないかと興味本位でスパイさながらの動きを見せる人種もいるのも事実。
「それから、まだ不確かな情報だけど、寮の方にも不審者情報が寄せられたみたいだよ。」
「寮に?ですか。」
首を傾げる郁に小牧は少し困ったように顔を向けた。
「これは別件になる、のかな。詳しくは帰ったら柴崎さんに聞いた方がいいだろうね。特に女子寮で大問題になってるから。」
何だろう。不安が郁の胸をよぎった。
「こっちは?」
小牧の報告が終わると堂上からの報告が待たれた。
「特にない。」
まるで世間から隔絶されたように穏やかな隠遁生活。当麻は敢えてニュースにも触れず 稲嶺所有の蔵書を書斎に篭って読み漁る日々。その中で方向性を見出したらしい当麻から、最近はリクエストを受けて資料となる本を届ける事が増えたくらいだ。

「笠原、帰るぞ。」
シンプルな指示に感情は見いだせない。でも少なくとも普段通り。
あの時誰かいただなんて────気の所為だったんだよ。まして教官だったなんて・・・
帰るために居間からカバンを持ち出した。濡れた服が入って いつもより少し重いカバンを。


堂上の運転する車の中、会話は少なかった。元々郁のお喋りに付き合う程度だったし、改めて説教されるシチュエーションのない警護内容だ。郁が黙っていれば自然堂上も口をわざわざ開かない。
とはいえ沈黙は居心地が悪い。
郁は堂上の横顔を盗み見た。
県展以降、カミツレのお茶を2人きりで飲みに行ってからというもの、堂上との距離が近くなっているような錯覚に陥ることもあり些細な言動にドキリとさせられる。
このところバディは常に堂上と組んでいる。2組で交代しているのだから1度組めば当然と言えば当然で、それを内心緊張しつつも喜んでいたのに────こんなに気まずいだなんて。
(勝手にこちらが意識しているだけだったら、怪しまれるよね。自分も普段通りにしなくっちゃ。)
郁は堂上から預かった封筒を取り出した。中には当麻からのリクエストリストが入っている。
「こ、これ、明日の朝お迎え行った時に届けた方がいいんですかね?」
「いや、もう図書館は閉館しているから、明日の業務中に貸し出ししておいてくれ。そんなに急ぎではないそうだ。」
「分かりました。朝イチで検索かけてみま────クチュン」
郁はぶるりと震えて小さくクシャミをした。
丁度基地敷地内に入ったところだ。堂上は駐車場に向かう手前で車を停めた。
「先に寮に入れ。体調管理はしっかりしろよ。」
ここは 駐車場より寮に近い場所だ。
「え、大丈夫────」
ちょっと違和感。
郁は気付いた。堂上はさっきから、いや、ミーティングの時から郁に目を合わせてきていないのだ。しかも何気ない口調だが、それは命令に近い印象を受けた。
「・・・では、明日8時半に寮の玄関でいいですか。」
郁は助手席のドアを開けながら確認を取った。いつも堂上が必ず指示する内容だ。
「ん。早く休め。」
「はい。」
郁がドアを閉めようと力を込めた時だった。
「髪をしっかり乾かさないからだ。」
バタンと閉まったと同時に発車していった。硬直した郁を残して。

寮での生活で風呂上がりに出くわす事は多い。
堂上の面倒見の良さが滲み出る言葉の1つに、郁が濡れた髪のまま共有スペースで飲み物を買ってうろうろする姿を目撃したら、ほぼ必ず指摘する内容がある。部下の体調管理にも口出しせずにいられない堂上は、時に郁の髪を乱暴に拭き上げながら「風邪を引くから」と口うるさい。
稲嶺邸でシャワーを借りた事は結局言えないままだったのだから 堂上が知るわけがないのに、このタイミングでこのセリフが出るということは。
郁の全身は真っ赤に染め上がった。


駐車場に車をすべりこませた堂上は、ハンドルを握ったまま大きくため息をついた。そしてそのハンドルを抱え込むようにして突っ伏すと、ゴンと音を立てて額を打ち付けた。
「・・・あの バカ」

突然目の前に飛び込んできた光景に 思わず面食らった。状況を飲み込む前に咄嗟にその場から離れた自分の判断は何かの警告か。既のところでフクさんと鉢合わせせずに済んだ。
郁とフクさんの会話で大体の察しはついたが、無防備にも程があるだろが!と、膝詰め説教したい衝動に駆られた。が、自分がその場にいて目撃した状況説明をする訳にいかないのだ。それでもつい口にしてしまったさっきの自分に自ら赤面する。
牽制────と取ってもらっても構わない。
「お前が悪い。」
今ごろパニックになっているだろう姿を容易に想像出来るが、きっと郁は分かっちゃいない。こちらがどれだけ求めているのかなんて。どれだけの想いを押さえ込んでいるのかなんて。

痴漢の囮捜査以降に見せた 郁の弱さと強がりに、傷の深さを思い知った。
大事にしたい。
笠原郁は共に戦い 背中を預けるに値する部下だが、男の自分にとっては もうそれだけではなくなっているのは明確だ。
ゆっくりと寄り添い始めた郁という存在を、真綿で包むように守りたいと思い始めた。その矢先の大事件に 正直苛立ちを覚えないわけではない。しかし互いに図書隊員なのだ。個人の都合を優先するわけにはいかないし、するべきではないと考える。その辺不器用なのも自覚済みなのだから、宙に浮いたままであろうが 今はここまでにしておくしかないのに。

まるで瞼に張り付いたように離れない光景に、堂上は苦悩する。


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