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2016'04.15 (Fri)

「月を仰ぐ」4(完)(リク7)

何よりも先に。
この度の熊本地震により、災害に遭われた被災地及び被災地近隣の皆様におかれましては、 心より御見舞申し上げます。
不安な日々をお過ごしかと思います。少しでも日常を取り戻せる日が早く来ますようお祈りしています。

私はTVニュースより先にSNSで地震の発生を知りました。ほんの数分前にやり取りしていた方が被災されるとは露ほども思いませんでしたが、無事も知り得ました。不自由を強いられている事に心痛みますが、遠い地から応援しております。
流れてくる善意の情報に心強く思います。こうしたツールを使うことの出来る時代に感謝したいです。

更新です。
やっと1つ連載が終わります(^^;
なかなかリクエスト完遂されませんが、少しずつ着実に消化していきたいです。
リクエスト内容は最後に。

えーーーと。皆さんに 教官の後頭部をスパコーンとスリッパで叩かれる図が思い浮かびますがwww。コレも我が家らしい堂上さんなのでご容赦を。

↓こちらから どうぞ


【More】

「月を仰ぐ」4(完)(リク7)


良化隊も覗き魔も、数日間は動きがなかった。
堂上と郁の様子も膠着状態。業務に支障のない程度。
ケンカしている訳ではなさそうな でもギクシャクした微妙な距離感と雰囲気は、ミーティングにしか顔を合わせない小牧にも伝わってきた。「何かあったの?」との小牧からの耳打ちに堂上は詳しく説明するわけにはいかず、適当にやり過ごしていた。

当麻の警護をしている堂上班は寮の不審者警備からは外れているが、同じ独身寮住まいなので話は耳に入ってくる。小牧・手塚組が寮の風呂での入浴中にも他隊員からその話題が聞こえてきた。
「警戒されてるとはいえ覗きのヤツもそろそろ痺れを切らしてる頃だろな。餌撒かれてるって噂だし。」
「女子寮風呂には 脚の長い美人が長湯してるってやつだろ?。湯船から脚がにょきって上がってる絵を想像するとそそられるよな。」
「んなこと本当にする女っているかよ、妄想し過ぎじゃね?。にしても普段訓練服に覆われてるところを見たくなる衝動は分かるよ。生脚拝見したいよな。何せ伝説のお御足の持ち主だし、笠原は。」
最後に出てきた名前に 小牧と手塚は顔を見合わせた。
「ちょっと、それどういうこと?」



痴漢の囮捜査で披露された郁と柴崎の装いは暫く語りぐさとなった。特に意外な変身を遂げていた郁にどの男性陣も驚きを隠せなかったらしい。
ここ武蔵野第一図書館のみにあらず、未だに武蔵野第二図書館でも根強く噂されているという。というのも、元々知れ渡っていた柴崎の美貌を拝む為に影から視線を送っていた男性館員達が、その隣に立つ背の高い女性の存在にも目が奪われたからだ。
「誰だ?」とざわめく中、情報として流れてきたのは捜査の計画書から判明した「特殊部隊所属 笠原郁」の名。その情報に武蔵野第二図書館に配属されていた同期達は目を疑った。教育隊での山猿だった郁の言動が印象深過ぎて、柴崎の隣に立って遜色ないお嬢様風な女性が、同一人物とは思えなかったほどだ。
ここは東京都内の図書館に配属されている隊員の独身寮。配属後は接点が少ない為、これまで表立ってなかったのだが、囮捜査以来意外なほど郁の人気は高くなった。
ここにきて餌の噂である。覗き魔としては危険を冒してでも1度拝んでみたいと思うのは男の性であろうと。


「アイツにそんな色気を感じるもんですかねぇ。」
「十分だよ。手塚にだって見違えるほどキレイに見えただろ?」
口に出す既のところで遮ったはずの言葉をあげられて手塚は慄いた。
「し、しかし中身はっ・・・」
「覗き魔に女性の性格がどうとかは関係ないよ。ただ笠原さんのスタイルの良さは知れ渡ってるって事さ。でも────」
あの件で男性恐怖症にさせたことを悔やんでいた堂上が、郁を餌に使う事を許可するとは考えにくい。大事にしてる子を他の男に触られたり覗かれたりして平気であろうはずはない。その気持ちは痛いほど分かるし、今の堂上なら断固として阻止するはずだ。実際この件は堂上班は関与せず、他班の寮生で対処することになっているのに。

どうやら すれ違いが生じている原因がありそうだ。
────それでも守りきる。
言葉足らずで不器用な友人はそういう男だから。
小牧は早い解決を願った。



郁は大きなため息をついた。広い風呂場に響く。
稲嶺邸警護後なので入浴時間は遅く、女性隊員達の姿もまばらだ。覗き魔は警戒されていることは分かりきっているからか、なりを潜めている。
「ま、餌が餌だし食いつくわけないか。」
覗き見防止に 浴室内の窓は入浴中は閉め切りを指導されている。郁の判断で自分の入浴中だけ1箇所細く開けて誘ってみてはいるが、今のところ不発に終わっている。一緒に入浴する子には了承済みだ。
「あたしが絶対捕まえてあげるから。」
しかし大きく出た割にモヤモヤと胸の奥に渦巻くモノが拭いきれないでいるのは、克服したと思っていた症状が未だに燻っているからか。
ダメ。
郁はブクブクと頭まで沈んでから一気に上がって ブルブルと頭を振って水気を飛ばす。弱気までも吹き飛ばすように。
足でまといなんかにはならないんだから。覗きをするような卑劣な男には負けない。ムキになっている自覚はあるけれど、こうでもしていないと潰れてしまいそうだから。
小牧から指摘されたように、堂上から大事にされていることを疑っているわけではない。実際大事にされている実感はある。
でもソレは部下だから。
少し。ただ、少し近付いたと感じられたのは、実は勝手に思い込んでいるだけだとしたら・・・悲しすぎる。だからせめて、使える部下として認めていてもらいたい。ただそれだけ。

カタン

────僅かな音を聞き逃さなかった。



女子寮奥に位置する風呂場の裏をはじめ、基地内には意図的に木が植えられている。戦闘時の目隠しや監視避けの為だが、人が隠れるにはもってこいだ。官舎と寮を周回するコースを外れた建物の陰は闇が濃く、人がいても気付かれない。浴室の窓は高い位置にあるため、普通であれば覗かれたりはしないはずだ。
しかし現れた人影は慣れた手付きで木の枝を掴んで幹の窪みに足をかけて上がると、太い枝元を足場に器用に登っていく。そして細く開けられた窓に向かって首を伸ばした。

「あんた 何してんのよ!」

突然の怒鳴り声にびっくりしてバランスを崩した人影はずり落ちた。咄嗟に枝を掴んだが、強かに地面に叩きつけられる。
裏口から飛び出てきた郁の声だった。
しかし足から落ちた為に衝撃は思ったほど強くなく、直ぐに態勢を整えた男は怒鳴り声が女性のモノと判断すると襲いかかってきた。
「っ!」

タタタタタタタタタ

軽く乾いた音が連続して起こり、闇から飛礫のようなものが放たれた。
郁に掴みかかるところだった男はたたらを踏んでから転がると全身に何かを浴びて悲鳴をあげる。
「痛っイタタタタ!」
郁が男を警戒しながら音のする方を窺った先には進藤。男子寮裏側の茂みから進藤の射撃が襲っていたのだ。
手にしているのは電動ガン。後方支援部がカスタムしたゴム弾を搭載した試作品だ。
連射が止むと 郁の脇から待機していたらしい男性隊員が風の如く現れ、男を組み敷いた。
その背中に見覚えがあり過ぎる。

進藤も駆けつけ、後ろ手にされながらも抵抗しようとする男の鼻先に電動ガンを突きつけた。
「コイツらは試作品のオモチャだが威力は十分なのは実証済みだろ。もう一度至近距離で食らってみるか?」
後方支援部は主力電動ガンの各式で試作品を作っているらしい。背中に2.3種類の違う銃を背負った進藤が郁に言った。
「こら、笠原。俺達の仕事をとろうとするんじゃない。おまえが今やらなきゃならないのは当麻先生の身辺警護だろ、こっちの警備は俺達に任せておけばいいんだ。」
「夜な夜な試し撃ちの機会を窺って俺んとこ転がり込んで来るんだ。いい迷惑だったぞ。」
緒形ものっそり顔を出した。
「元同室のよしみだろ?。懐かしい話で盛り上がったからいいじゃないか。」
覗き魔を練習の標的にする為に、世帯官舎の進藤が緒形の部屋に入り浸っていたらしい。

観念した覗き魔は緒形に引き渡された。
「堂上もご苦労だったな。わざわざ待機隊員と代わってよぉ。」
ちょっと意地悪なにやけ顔をしたのは進藤だ。
「ま、お説教はほどほどにな。」
ポンと堂上の肩を叩いてから男の首根っこを捕まえてぐいっと睨む。
「お前の説教はこれからみっちりと、だ。」
所属と名前を確認された男は項垂れて緒形と進藤に連れられていった。


「かーさーはーらーー。」
2人きりになって発された 地を這うような低い声は堂上だ。犯人を捕縛した興奮のまま肩で息をして、ゆっくりと振り向いた。
が、郁の姿を改めて見て血相を変えた。
「なんて格好だ!」
郁は濡れた体にスウェットと上はTシャツ1枚という出で立ちだった。髪から水滴が垂れ、濡れたTシャツは体にぴったり張り付いている。
物音を聞いてすぐさま一緒にいた隊員に警報器を押させて退避させ、自分は犯人を捕まえるべく急いで着替えたのだ。
「や・・・」
ずっと腕を前でクロスしていた郁だったが我に返ると真っ赤になって反射的に背を向けた。向けた背中に下着の線がくっきり見えるなんてことまで頭が回らないのだろう。
その背中はガタガタと震えている。まだ冬の気温だ。堂上は自分の上着を乱暴にかけた。
「アホウが。風邪をひく。」
堂上も風呂上がりに見張りをしていたのだ。持っていたタオルでガシガシと郁の髪を拭きだした。

堂上は前に回り、濡れて冷えきっている郁の俯いた頭を 温い大きな掌で包み込むように手を置いた。
無茶をする部下の行動パターンを読んで、いつでも駆けつけるつもりでいた堂上は、ホッと安堵した。
「・・・見た・・・ん・・・ですよね・・・」
ボソッと行った言葉に、堂上はびくりと手を離した。稲嶺邸での事だと察する。そして。

「すまな────」
「謝らないで下さい!」
頭を下げた堂上より深く郁も頭を下げた。
「謝られてもなんか・・・見せちゃったのはあたしなんだしっ」
できればこんな話はしたくなかった。コンプレックスそのものだから。
「逆にあんなの晒していたたまれないというか・・・教官もどうせ見るなら柴崎みたいなさ、もっと女らしい────」
ギュッと、掛けられた上着の胸元を掴んで自嘲的な笑みを浮かべる郁に、堂上は眉間のシワを深めた。
「なんでここで柴崎の名前が出るんだ。・・・だからおまえは分かっちゃいないんだ。」
「だって・・・」
郁は逃げ出したくなる衝動をぐっと堪えた。
せめて柴崎みたいに女らしい体をしていたのなら、と思わずにはいられない。好きな人だからこそ臆病になる。

「綺麗だった。」
・・・?
堂上が言いたいことが郁には分からなかった。そっと堂上の方を見た。
沈黙の中 視線を外していた堂上は、するりと掌で自分の顔を撫でた。
「たまらなくなるほどに。」
木々の間から届く月明かりに照らされたその表情に、郁の心臓は忙しく跳ねる。
堂上にそんな顔をさせているのは何なのか。
「な、何が・・・」
「言わすのか?」
ぎろりと睨まれて足が竦むが、まさか・・・まさかと頬が紅潮していく。
「触れていいのなら────」
堂上の腕が上がるのを郁は凝視した。体は痺れたように動けなくてギュッと目を瞑る。
軽く引かれて 気付いた時には堂上の腕の中にいた。最初は触れる面積が少ないように ふわりと囲った腕が、郁の抵抗がないことを知ると徐々にきつく引き寄せ抱きしめた。
落ち着かなくもじもじしていた郁だったが、冷えた体が堂上の温もりであたためられてくるに従って 素直にその身を預けた。さっきまで燻っていた表現しにくいもやもや感が すっと溶けていく。ああ、やはりこの人でないとダメなんだと。
「お預けを食らわされてる身にとっては目の毒だった。」
「え、ど、どういう意味・・・」
堂上は ふと笑うと体を離した。
「あほう。今すぐ欲しくなるだろが。やっぱり言わん。」
堂上は困惑したままの郁の襟を掴み、触れるように唇を重ねた。
「今は言わんが────逃がさん。」
「そんなぁ。ズルイ。」
「何がズルイだ。勝手なことしやがって、大体だなぁ────」
甘い雰囲気はどこへやら。いつもの説教が始まった。

「もういい。犯人は捕まったんだ、心配いらないから体を温めてこい。」
長くなりそうな説教も郁のクシャミで収束した。
「髪はしっかり乾かすんだぞ。」
「────はい。」
はにかんだ笑顔が月明かりに映えた。


郁を見送った堂上は空を見上げ、明るく光る月を視界に入れると手を伸ばした。
あの日、月に誓った言葉を伝えるのはもう少し先。
手が届く。
そう互いに思っているはずだ。
未だ厳重な警戒を敷いている中、どんな厳しい展開が待っているか分からない。しかし共に最善を尽くし任務を完遂した暁には────


月を仰いで吐く息は、白く、熱かった。



===============


リクエストは ぴぴさんより
『「月に誓う」のあとの二人が読んでみたいです。囮捜査後、トラウマを乗りきった郁ちゃんを教官はどうしたか。今まで以上に過保護に見守ったんじゃないか。フライングになっちゃうかもですが…できたらでいいのでお願いします。』
でした。
いきなり時期を革命に持ってきちゃったので、書き始めてから(あ、もう1話間に欲しい)とも思い 筆?が一旦止まってしまいましたが何とか。
「月に誓う」は好きですと言って下さる方が割といらして、とても嬉しいです。同じ女性としての郁ちゃんの一面を不自然さのないようにと心掛けたお話です。
今回微フライング(笑)という中途半端さですが、堂上さんの誓いの言葉、実はindex3のNo.60あなたに伝えたいの最終話にチロっと匂わせてるので・・・という いつもの勝手なこだわり設定ゆえ(^^;←誰にも気付かれないよねぇww。とにかくこの人、大事な事はホント口にしないメンドーな男・・・。

リクエスト頂いて既に1年、主様にも忘れさられてるかもしれませんが。
ぴぴさん、遅くなりましたがリクエスト有難うございました。

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 | 2016年04月16日(土) 00:03 |  | コメント編集

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