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2016'10.05 (Wed)

「分岐点なんて いらない」

こんばんは。
あぁ、こんばんはになってしまいましたね。し
昨日は10月4日、堂上さんと郁ちゃんの出会いの日でした。安定の遅刻は確定していましたが、記念SSを書いていました。
が、途中 愛用のiPhoneが充電出来なくなってお手上げ状態。お絵描きで使っているiPadで書こうとしても勝手が違うわ 書いた内容の記憶が曖昧だわで更に遅くなってしまいました。家族漏れが怖くてiPhoneはどことも同期してないので、これがないと何も出来ません。不便だけど仕方なし。
やっと何かの拍子(この時点でオカシイ←)で充電出来るようになったものの文章を繋げるのに手間取ってこの時間です。
まあ、昨日は沢山の素敵記念SSが上がっていたでしょうからお腹いっぱいかと思いますが、ついでに我が家のも読んで貰えると嬉しいです。
台風、また来てますね。さきほどから雨脚が強くなってきました。しかし 毎日毎日よく降り続きますねぇ(´・・`)。

久しぶりの更新です。一応出会いの日記念SSです。元ネタは只今中途半端で止まっている連載「堂上、2人」の別バージョンというか(^^;、まあ、単独で大丈夫です。上官・部下で 内乱。小牧教官奪還直後です。( ゚д゚)ハッ!また微糖じゃん・・・

↓こちらから どうぞ

【More】

「分岐点なんて いらない」


そんなに飲んだわけではなかった。

タフな小牧は、良化特務機関の査問会での衰弱を1日で回復させて業務復帰した。その晩には堂上の部屋にビール持参で訪れてきたほどだ。
小牧を無事奪還して気が緩んだからか、いろいろ心理的ダメージ(オジサンとかオジサンとかオジサンとか・・・)を受けていたからか。堂上は小牧と部屋飲みをしている途中で記憶がぷつりと途絶えた。



見慣れぬ天井だった。
タイマーに頼ることなく目が覚めるのは常だが、時計を見るといつもより遅い。そうか、今日は公休だった。堂上はベッドに寝たまま グッと伸びをした。
・・・・・・!?
ガバリと起き上がって部屋を見渡した。ここは────
布団をめくりベッドから飛び降りて窓を開けると、目に飛び込んできたのはいつもと違う景色。普段であれば 左手に中庭の木々がさわさわと揺らめいているはずが、開けた空間が広がっているだけ。下を覗くと多少手入れの施された庭が見える。ただ初めて見る景色、ではなさそうだ。


「どうじょー、休みの日ぐらいゆっくり寝かせろよな」
二段ベッドの上から声が聞こえた。
「あ・・・すまない」
そうだ、ここは関東図書基地の独身寮ではない。図書大卒の入隊1年目は外部研修にあたる卒後カリキュラムがある。図書大後半2年のOJTは都内(主に武蔵野第一図書館)で実施されていたが、入隊後は関東圏のよその図書館にいくつか配属され経験を積むことになっている。
「窓閉めてくれよ。やっぱ茨城は都内より秋が早いよな」
同室の隊員がカーテンの向こうで布団を被り直す音がした。

「?・・・・・・って、おい!」
堂上は先程から大きな違和感を覚えていた。
2度寝を決め込んでいた隊員のベッドのカーテンを勢いよく引いて 背中を向けて丸まっている隊員を揺り動かした。
「ここはどこだ!今日は何日だ!」
その堂上の大声に 怪訝な色を濃く浮かべて、迷惑そうな顔を向けた隊員が言った。
「はぁ?堂上寝ぼけてんのかよ。ここは茨城。水戸準基地の独身寮で、俺達はここに研修できてるんだろが」
「茨城・・・」
改めて耳から入れたその響きに愕然とする。
「今日は10月の、んー4日か。久しぶりの休みなんだから惰眠を貪るって、俺は昨日宣言して寝たんだよな」
不愉快げに念を押すようにそれだけ答えると 再び布団に潜り込んでしまった。
堂上は慌てて部屋を出ると、共有スペースまで出て 1番手前にあった新聞を広げて日付けを確認した。
【正化26年10月4日】
「26年?」
今は正化32年の1月のはずだ。しかし外の樹木に茂る葉はまだ本格的に色づく前のようで、新聞の日付け通りの季節。堂上の直前の記憶にある冬の景色ではない。
堂上はそのまま洗面所に向かい 恐る恐る鏡を見た。
そこに映っているのは紛れもなく自分の顔。但し────若い。
「どういう事だ?」
バシャバシャと顔を洗ってみたものの現状は変わらず、懸命に記憶を辿るが疑問は解決されない。
ただ どうも妙な事態に陥っていることは確かだ。にわかには信じられないが、自分は姿形も状況も そのまま約6年前に遡っているのだ。
ありえないが夢というにはヤケにリアルに腹が減っている。状況把握のためにも 食堂に行き食事をとることにした。

研修仲間で今日が公休なのが数班。そのうちの1人が堂上を見付けると寄ってきた。
「よう堂上、今日は映画にでも行かないか。ベストセラーの実写化なんだけど 今観客動員すげーんだとよ。研修期間中に公開終了するから今日行っとかなきゃ見逃しちまうことになりそうでさ」
そういえば、と記憶がある。当時大ヒットした映画だ。たしか数々の映画賞を総なめにして主演俳優の評価が上がった映画だ。
「いや、都内ではロングランが決まるはずだ。映画に行くなら彼女と行けよ」
「え、そなの?じゃ、帰ってからデートで観ようかな────って、そんな発表あったっけ?」
地元にラブラブな彼女がいると いつも惚気けている隊員だ。一緒に出掛けてそんな自慢話を聞く気にはならないし、大体男同士で映画に行く虚しい時間を今過ごしたくはない。それよりこの状況を何とかしなくては、との焦りが大きい。
未だ首を捻っている彼を置いて、堂上は独り街に出ることにした。


同室の隊員を起こさないように着替えて財布だけを持って寮を出ると、暫くぶらぶらと駅方面に足を向けた。研修期間中は休みといえどもラフ過ぎる格好は禁止されておりスーツ着用が義務付けられている。適度に都会、適度に田舎。生まれも育ちも東京である堂上は幾分面積の広い空を見ながら歩いた。近辺は市街哨戒に出ただけで、地図は頭に入っているがゆっくりと景色を見ていなかった。しかし1度訪れたことのある街並みは懐かしい風景。
特に目的もなかったはずが、いつの間にか覚えのある書店が見えてきた。

大型店舗ではない 昔からあるような地域密着型の中堅書店。出入口に並ぶ週刊誌が見えてきたところで堂上の足がとまった。
あの日と変わらぬ情景。当たり前だ、今日が当日なのだから。そう、忘れるはずはない。散々始末書に書いた日付けだ。

【正化26年10月4日】

今日の夕方、ここで良化特務機関の検閲がある。
『いいわよ!行くわよ!店長さん警察呼んで!あたし万引きしたから!盗った本と一緒に警察行くから!』
狩られる本を必死になって守ろうとした少女と出会う場所。あの凛とした声はまだ耳に残っている。

堂上はくるりと踵を返した。近くに映画館があるらしくポスターが並んでいる。先程誘われた映画の宣伝も大々的にされていた。真っ青な空を基調としたシンプルだが目に鮮やかなポスター。上映期間終盤だが 繰り返し観る観客も多いと聞いた。6年前は大画面では観なかったが、ふらりと寄ることにした。


映画館を出ると 街を行き交う人々の中に学生の姿が混じるようになっていた。10月に入り衣替えが行われているのだろう。ブレザーやカーディガンを羽織った学生達が楽しそうにお喋りしながら歩いている。

腕時計で時間を確かめた。間もなく良化隊員がやってくる。
今なら、あの時の反省を活かせるはずだ。勝手に見計らい権限を行使することもなく 始末書を書いて査問会に呼びだされることもない。
自分の軽率な行動で原則派全体の立場を危うくしたのは あの頃の未熟な自分が原因だったが、今の自分はもう違う。同じ真似はしない。欠点を克服した図書隊員、なのだから。

しかし映画を観ながらも考えていたのは、少女のことだった。映画の内容そっちのけで脳裏に浮かんできたのは、勝気そうだが まだあどけなさを残した少女がとった行動。何の力も持たない普通の女の子が勇気1つで 大きな権力に立ち向かった姿が、5年後に再会した「笠原郁」と重なると、堂上の胸に熱いものが広がった。

────どうする?

このまま書店に行かなければ。
少女は間違った背中を追うこともなく、危険な職種を選ぶことは無いだろうか。図書隊に妙な幻想を抱かなければ、別の人生を送ることになるだろうか。

別の人生。

堂上は空を仰ぎ見た。映画のポスターのような青い空が広がっている。天高い秋空はあの日の記憶と6年後の日々に結びつく。

────どうしたい?

迷いはなかった。懐の図書隊の手帳に手を当てて前を向いた。



「────堂上、堂上」
肩を揺すられ浮上する。
「風邪ひくよ」
目の前には小牧。
「ん?」
堂上はコタツ兼テーブルから頭をあげると、辺りを見回した。
見慣れた自室と見慣れた顔。
「俺、部屋に戻るよ。明日またな」
小牧は空になった缶を片手に立ち上がった。
「すまん、寝てたのか俺は」
「まあね、でも一時だったよ。いろいろ世話になった。ありがとう」
やはり 夢、だったのか。しかし酔っているわけでもないのに居眠りするなんて珍しいことだった。
堂上も立ち上がって窓の外を見た。
「俺もちょっと酔い覚ましに外に出るか。」
小牧とは部屋の前で別れて、堂上はロビーに向かった。


階段を下りながら 小牧の言葉を思い出した。
『好きだよ』
幼かった毬江はいつの間にか小牧には大人の女性として成長し恋愛対象となった。気付かないふりをするのは簡単だ。しかしごまかしはやがて出来なくなる。

「あ、教官!」
ロビーに出て かけられた声にドキリと胸が鳴った。
「笠原か」
郁はスポーツドリンクを買いに来ていたらしい。明るい笑顔が眩しい。初めて会った時は検閲の最中で、不安気にくもった顔か泣き顔しか見られなかった。

再会後は厳しく接した。
弾くつもりでしかなかった扱きは 自分の傍に置きたいがための扱きに。そう自分の前提が変わっていったことに もう気付いている。
君のいない世界はありえない。たとえ辛い思いをさせることが分かっていても、この笑顔を知った今では俺が手放すことは出来ないのだ。

「小牧教官、あっという間に復帰されましたね」
「ああ、もう大丈夫だ。さっきまで一緒に飲んでたくらいだからな」
「さすが日頃から鍛えてるだけあるなぁ」
郁の目の前で良化隊に連行されていったのはたった数日前のことである。あの憔悴しきった小牧の姿が郁の目に焼きついている。そして何故か重なる。目の前の堂上も多分きっと────

「・・・ありがとう」
出会ったことは俺の我が儘か。追いかけて来たことにたまらなくなるのも勝手な思い込みか。
「へ?ああ、毬江ちゃんのことですか。恋する女の子のことなら任せて下さい。頭のかたいオジサンには分からないでしょうからね」
「オジサンオジサンうるさいわ」
グサリとやられた分はペシリと叩いておく。
「オジサンは────イヤか?」
するりと出た言葉には後悔した。王子様とオジサンでは勝負にもならない。
しかし郁は相変らず小牧と毬江のことと思ったらしい。
「女の子が好きになった人は 年齢関係なく王子様なんですよ。小牧教官なんて見た目もわかりやすい王子様だもの、お似合いですよね!」
い~なぁ〜 と羨む郁の呟きに、堂上は小さくため息をついた。

「ほら、早く休め。明日からは訓練も通常メニューだぞ」
「はい」

あの日 出会えたからこそ 今がある。この豊かな表情を見られる未来に行き着いたのだから、この先どんな展開になろうとも、きっと後悔なんてしない。

10月4日。
分岐点。たとえ何度繰り返しても、君に出会う選択肢しか選べない。


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 | 2016年10月07日(金) 11:05 |  | コメント編集

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