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2017'01.11 (Wed)

「郁の窮地」

こんにちは。
やっと。やっと長い冬休みが終わりました。
お正月は 田舎の同居の長男の嫁、いつも以上に嫁をしていました。しなこさん、全く一緒ですよー(;▽;)。そして帰省でお嫁さんした皆々様もお疲れ様でした。
お酒に食事と、てんてこ舞い。年末年始は休まる気がしませんよね。しかも今年は急なお客さんや急な泊まりとかで、愚痴るヒマさえありませんでしたよ。日数的には短くても、とっても濃い嫁さん仕事でした。
その分、冬休み終わり際は 男組だけで旅行に行ったので(長女部活で女組はお留守番)、3日間は昼間のんびりしました。その間ちょこちょこ書き出したので更新です。
前回の「煽るのは君」とほぼ同時に考えていた内容なので、またまた教官入院中ですが、年明け1作目なので スタートに引っ掛けました。(くだらな過ぎてボツにしたけど復活させる主婦根性w)

では更新です。時期は恋人期で主に堂上教官入院中。
今年もこんな感じで 宜しくお願いします。
↓こちらから どうぞ


【More】

「郁の窮地」


病院の廊下は走ってはいけない。いや、どこの廊下でもだが。
郁は最速の訓練速度で堂上の病室に向かった。


4日前、隊長室から発掘されたのは大量の書類だった。報告書であったり警備案件であったり細々とした各種書類であったり。
とりあえずと応接セットのテーブルの上に広げられた紙の山を前に、呼び出された堂上抜きの堂上班の面々は仕分け作業を余儀なくされた。

「ぎゃあ、何ですかこの量は!いらない資料までゴッチャじゃないですか!・・・やだ、提出期限過ぎてるのもある!」
郁が悲鳴をあげる。
基本副隊長である緒形が滞りなく書類を回してはいるが、いつの間にか引き出しの中や 机に積まれた資料の山に紛れていたりでカオス化していたのだ。
「堂上がいないから仕方ないんじゃないか?」
覗きに来た進藤が 当然とでもいうようににやにやと腕を組んだ。玄田隊長も大きく頷く。仕事の肩代わりもそうだが、堂上の催促がなければ面倒臭がってなかなか進まないのが現状だ。緒形・堂上揃ってこその隊長操縦術は発揮されていない。
「堂上教官は入院してるんですからいないのは承知の上でしょうがっ」
食ってかかる郁を玄田は涼しい顔で受け流すと、しれっと言い放った。
「後は適当に振り分けて処理しておいてくれ。俺は会議の後 出張に出る。小牧、判子はいつもの場所だ」
全て目は通してあるから と、さっさと事務室を出ていってしまった。
残されたメンバーでやっつけるしかない。小牧は他人事のように眺めている進藤の手にも書類を渡した。有無を言わさぬ笑顔を見せながら。


そんなこんなで、郁は残業を強いられ昨日も一昨日も堂上の見舞いに行けないでいた。作業は単純な入力を宛てがわれたが、量が量なだけに遅くまでかかった。
「先週のうちに回してくれていたら問題なかったのにぃ」
ようやく片付いて、今日はギリギリ面会時間に間に合いそうだ。4日ぶりに堂上と会える。郁は逸る心のままに足を繰り出した。
たかが4日、されど4日。なりたての恋人と会えないのは寂しいのだ。しかも自分には課せられたミッションがある。
郁はノックをして返事を待った。
「はい」
堂上の声にトクンと胸が鳴る。今日は何を話そう、何を見つめよう。ドアの向こうは恋人との空間。


会えなかった時間を埋めるように2人は過ごした。今日は時間が短いが、明日は公休日。たっぷり時間が取れる。それでも今を満たしたくて、堂上は郁の頬を撫でた。久しぶりにキスをすると、郁はキョロキョロとベッド周辺を見回して紙袋を見つけた。いつもより大きめの紙袋がベッドと棚の隙間に押し込まれてあった。3日も4日も見舞いに来られていなくて、洗濯物もたまってしまっただろう。一般の洗濯物は小牧が持ち帰って、リハビリなどで使ったタオルだけは郁の担当だが、小牧も来られてはいない。
「すみません、たまっちゃいましたね。今日は持ち帰って明日にはまた届けに来ますね」
「いや、いい。お前も毎日遅くまで大変だっただろう。小牧から報告は受けている。ったく隊長は相変わらずだな。だから今日はゆっくり休んで明日は手ぶらで来い」
堂上にしたら郁が顔を見せに来るだけで十分なのだが、郁の方はそうはいかない。
「ダメです。コレはあたしの仕事なんですから。明日は朝から天気が良いらしくて すぐに乾いちゃいますから、ね!」
彼女として今出来る精一杯のお世話を取られてなるものかと、郁は紙袋を抱きしめて離さない。
そんな汗臭いタオルを必死に持って帰ろうとする郁の頭に堂上は手を伸ばしてポンと叩いた。
「ありがとな。じゃあ任せるとしたもんだろう・・・しかしだな」
くすりと堂上が笑う。
「その袋の中は明日小牧に渡すつもりだった洗濯物だ。今日も郁は来られないだろうと思ったから、小牧に全部まかせようとさっき上にタオルを一緒にしたところでだな」
「え?」
ということは着替え全般が入っているということで。当然中には────・・・郁は真っ赤になって紙袋から覗いているタオルを見た。
「じゃ、じゃあ タオルだけ、いただいていきますね」
アタフタと別の紙袋に上層部にあるタオルを突っ込むと、残りは元あった場所に押し込んだ。そしてそのまま逃げるように病室から出てしまったのだ。
「おい、郁────」
ちょっとだけからかった代償として、別れ際のキスをしそびれた堂上だった。


「あら、今日は教官のタオルをゲットしてきたのね」
お風呂を終えた郁がいそいそと洗濯する姿に、柴崎は微笑んだ。部屋に洗いたてのタオルの山が積まれている。
「うん。リハビリの時以外でも 出来る範囲で自主トレとかしてるから、タオルの消費が半端ないんだよね。結構たまっちゃた」
「あんたが干すと 勝利の旗がはためくようよね」
郁は嬉しそうに鼻歌を歌いながら仕分けをする────と。
「パ!!」
突然叫んでガバリと洗濯物の山に覆いかぶさった。
「パ?」
のんびりテレビを見ていた柴崎は、郁の声に振り向いた。
「パがどうしたのよ」
慌てて洗濯物を丸めている郁に柴崎は首を傾げる。
「いや、あの、その・・・パ、パ・・・」
「?」
「パイナッポー、ペン・・・」
「ああ、流行ってるわね。あら、今出てた?」
柴崎が視線をテレビ画面に戻したところで、郁は素早く手を後ろに回した。
「いかにも小学生とかが食いつきそうなネタよねぇ、って、何やってんのよ」
柴崎が再び向き合った時には 郁はベッドのカーテンの中へ。
「うへへへへへへ、そ、そうだよねーー。さ、干しちゃお干しちゃおっ」
明らかにぎこちない様子でベッドからおりてベランダにタオルを干していく郁の後ろ姿に疑問を持ちながらも、まあいつものことと肩を竦めてテレビに向いた。
「あ、じゃあ、あたし寝るね」
干し終わった郁はそのままベッドに飛び込むと、きっちりとカーテンを閉めてしまった。
「え、もう?」
「えーと、ここんとこパソコンと睨めっこだったからさ、疲れちゃってて」
「・・・明日はお楽しみの公休日だしね。わかったわ、おやすみなさいな。あたしは適当にしてるから」
柴崎はテレビのスイッチを消すと雑誌に手を伸ばした。何かある と訝しんだものの。


郁はカーテンで閉め切ったベッドの上で、背を丸めて正座をしていた。その目の前に鎮座しているのは、男物の、パ〇ツ・・・。
見えないように両手で顔を覆う。

────なんでなんでなんで。
あたし紛れて持ってきちゃったんだ?タオルだけのつもりだったのに。
どうしよう!?どうしよう!?
って、教官 ボクサーなんだ。
・・・・・・!

指の隙間から覗いたものの慌てて目を逸らす。3人の兄がいるのだから初めて見るわけではないが勝手が違う。

────とにかく洗ったままにしておけないから乾かさなくっちゃ。でも干すにしたって 柴崎に見られるわけにいかないし。明日は柴崎は勤務だから、それまでは・・・

ベッドに持ち込んだハンガーに目をつむってぶら下げて、カーテンレールに引っ掛けた。ここなら柴崎には見つからないはずだ。郁は真っ赤になってソレから背中を向けて布団に潜り込んだ。

────でもでもでも。
乾いたとしても、どんな顔をして教官に渡す?
「洗ってきました」ってさりげなく・・・
無理無理無理!
パ〇ツだけピンポイントで1枚持って帰っただなんて まるで痴女じゃん。いや、わざとじゃない、わざとじゃないけど!

寝返りを打ったところで視界にソレが入る。
内心叫んで また向きを変える。
そんなことを繰り返してギシギシとベッドが軋む音がした。

「眠れないのー?」
「寝ます!今すぐ寝ます!」
柴崎の声かけに、郁は布団を頭から被った。

────どうする!?どうするぅ!?


............................................


「てなわけで、ようやくお返しする日がやってまいりました・・・」
郁は堂上に紙袋を差し出した。受け取った堂上は、紙袋の底の中身と 郁の真っ赤な顔を交互に見た。
ここは新居、2人新たな生活をスタートさせる官舎の一室。郁の荷解きをし始めて間もなくであった。
新品のソファーの前で俯き正座をした郁から改まって渡されたのは、小さく折り畳まれたグレーのパン〇。
「・・・後生大事に保管してたのか」
「や、だって どうにも言い出せなかったんだもの。教官もなにも言わないし」
堂上の方は 下着が1枚ばかり増えようが減ろうが気がつかない。
「返すわけにも まさか捨てちゃうわけにもいかないし・・・だから」
紙袋に包んでタンスの奥に押し込んでおいたのだ。時間が経てば経つほどタイミングも失い、記憶からも薄れ(消去され)、引っ越しの際に突如発掘されたというわけだ。
「べ、別に 眺めてたとかそういうんじゃないですからね!変な誤解は絶対しないで下さいよ」
後日 結局柴崎の尋問にあって白状させられた際に「防犯対策に外に干しておいたら」なんてからかわれはしたが、女子寮にありえない光景に却下した────とかは口が裂けても言えない。
「俺はコレクションにされてても構わなかったけどな」
「ちょっ、何言ってるんですか!あたしにとっては大問題だったんだから!!」
奥手な郁をからかって真っ赤な頬を堪能するのは楽しいが、拗ねられ過ぎても困る。しかし。
「これからは恥ずかしがってられないぞ、一緒に生活するんだからな。奥さん」
郁の手を取って ソファーに促した。適度な弾力が心地よい、2人で選んだこだわりのソファーだ。
「はい・・・。」
洗濯だけではない。食事から何から、これからは2人で共に暮らしていくのだ。
互いに不慣れなところはあるだろう。それでもこの人と一緒ならば。
郁は堂上の肩に寄り添った。


「俺も洗濯するけどな」


4階建ての官舎の2階。愛する2人の 新たな門出を祝おう。



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 | 2017年01月11日(水) 21:53 |  | コメント編集

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