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2017'04.10 (Mon)

「甘えたがり」

春です!新年度です!
桜も満開です!(この辺りは入学式に間に合わなかった泣)
新生活の始まったご家庭も多いことと思います。おめでとうございます。
我が家も春休みは前回の記事通り、いろいろ重なりすぎて寝る間のないほどのてんてこ舞いな日々でした。が、やっと通常営業。毎日スマホゲームに明け暮れております←アカン
そして、いまこちらに来て愕然!初めて広告を出してしまいました。( ゚д゚)ハッ!今日で丁度前回の記事から1ヶ月ではないか!!確認を怠ってました(T^T)。ショック。ゲームやってる暇はあるのにぃ←だからアカン

てなわけで、慌てて更新です。(くそう、昨日のうちにしておくんだった)
上官・部下期間。革命の3月です。
↓こちらから どうぞ


【More】

「甘えたがり」


隊全体に当麻の保護が開示され身辺警護に防衛部の人員を確保出来るようになり、特殊部隊の警備関連は楽にはなった。

「堂上二正は?」
堂上班は午後事務業務だった。その特殊部隊事務室に防衛部員が書類を持ってきた。
「えっと、今は・・・」
現在隊員は外出時にその行き先を申告し、行動予定表に逐一書き込む形式になっている。小牧が公休時に「武蔵境~三鷹近辺」と書きこんだのを見て羨ましく思ったのはつい先日だ。
「武蔵野第二図書館ですね。会議に緒形副隊長の代理で出席することになってお昼から出たままです」
「そうかぁ、当麻先生や御家族の警護について報告があったんで持ってきたんだが・・・」
当麻とは堂上班に一任されていた警護以来、郁はあまり顔を合わせてはいない。当麻の部屋が男子寮の客室というのもあるが、秘書役も兼任するため本を探すのに時間がかかるという評価の郁は積極的には警護ローテーションに加わっていないからだ。様子を聞くところによると、基地での生活パターンにも慣れて執筆に集中されているとか。少しでも事件のストレスが軽減されることを祈るしかない。
「あ、教官は夕方に戻ってくるはずだから、あたし預かっておきます」
「そうか、頼んだよ」
当麻の裁判を控え、何かと書類関係の仕事が増えているから処理が遅れると仕事が押して支障が出る。郁自身も今日1日パソコンと格闘中だ。書類を受け取ると脇に置いて自分の仕事に没頭した。



「笠原さん、日報は堂上の机の上に提出して帰っていいよ」
気づけば定時が過ぎ、小牧と手塚は帰り支度をしていた。しかしまだ堂上は戻っていない。
「はい・・・でも報告書を預かってるのでもう少し堂上教官を待ってみます。この入力もまだかかりそうですし」
手塚と違って まだ厚みの残る書類に苦笑いでそう申告した。
「ん、お疲れって伝えといて。じゃ、お先にね」
小牧は何かふくみをもたせたような、でもサラリとにこやかに手塚を促して帰っていった。
他の隊員も次々と退室していき、事務室には郁1人となった。
「ふぅ・・・」
静かな空間にため息が響く。
業務としては通常だが気は休まらずにいる。未だ解決の糸口が見えない事件そのものの重さはあるが、それは任務だ。全力で護る覚悟はある。たまたま堂上班の公休日に原発テロが起こり、極秘裏に当麻を匿う任務を拝命されたのが始まりだ。
あの日は堂上とデート、らしき外出をしていた。この先自分達の何かが変わると期待できたのはつかの間で結局何もかわらなかったのだが、警護の特性上、共に過ごす時間は増えていった。

残ったデータを入力し終わった郁は伸びをしながら堂上の席を見やった。机の上は整頓されてはいるが、普段より多めの書類が積まれている。警護は楽になったがこうした仕事が増えた分、堂上と面と向かって過ごす時間は格段と減った。
「・・・寒っ」
日が暮れてくると事務室はひんやり冷えてくる。
「もう戻ってくるよね」
郁は椅子に掛けてあったカーディガンを羽織ると事務室を出た。

薄暗く静かな廊下に郁の足音が響く。日は延びてきているが日没後は一気に暗くなる。桜の蕾がそろそろどうなっているのかなんて気にする余裕はなかったなぁ、お花見できるといいなぁ、と立ち止まって暫く窓の外を眺めているうちにすっかり暗くなっていた。
「いけない」
うっかりな時間を過ごしてしまった。慌てて事務室に戻ると堂上の机の上にファイルが乗っている。さっきまでなかっのだから堂上が武蔵野第二図書館から帰ってきたのだ。しかし姿がない。プレートを見ても帰寮の文字はない。
「近くにいるかも」
郁は足早に探しに出た。
自販機が置いてある階段脇の休憩所には気配がない。各資料室に電気は灯っていないからいないようだ。
各階を探し回っているうちにすれ違って帰ってしまったかも、そう思い始めて戻った事務室の前に見慣れた背中を見つけた。
「教官!」
郁は走った。
事務室のドアに手をかけたまま振り向いた堂上の前で、追いついた郁は大きく肩を上下させた。
「・・・廊下を走るなと何度言ったら――」
「やっと会えた!」
ぱっと顔を上げた郁の頬は上気して赤く染まっていた。キラキラとした瞳を向けられた堂上は一瞬声を失ったが何とか立て直す。
「お前、どこに行ってたんだ」
「え?探してくれてたんですか?」
「電気ついたままだったし、お前の席に荷物が置いてあったからな。鍵をかけるにかけられん・・・トイレか」
相変わらずデリカシーに欠ける。
「ち、違いますよ!あたしは教官を待ってたんです!」
「俺を?なんで」
「え、なんでって――?何だったっけ?」
2人事務室に入りながら郁は首を傾げる。
「桜の木を見てて・・・あ、だいぶ蕾が膨らんできましたよって・・・いや、そうじゃなくて」
違う。こんなことじゃなかった。すっかり舞い上がって思考が行方不明だ。
「なんだ?コレは」
郁の机の上にあった書類を堂上が目に止めた。
「あ!ソレですソレ!防衛部から預かった報告書なんですけど、当麻先生の警護に関することだから早めに目を通して貰った方がいいかなって思って」
事件発覚当初は当麻の自宅近辺を特殊部隊で警護していたが、今では防衛部が手がけている。寮の客室で過ごしている当麻に着替えを届けるなどして面会も行われており、その報告であろう。堂上は顎に手をあてながら報告書に目を通す。その姿を横から見ながら、郁は稲嶺邸で警護をしていた時のことを思い出していた。こうして2人バディを組んで当麻と過ごした日々は、基地とは違って生活感があって特別な時間だった。
「当麻先生、お元気ですかね。作家さんって気難しい人のイメージがありましたけど、気さくな方でしたよね。ふふ、最初にあった時の教官の緊張した顔」
昔からファンだった作家とのいきなりの対面で見せた、普段の堂上ではありえない緊張の様子が思い出されて笑いがこみ上げる。それと同時にあの頃のいろいろな状況も。
堂上とて同じだ。
「お前の読書傾向がよく分かった事例だな」
堂上の頬がふと緩んだ。思えば業務に直接関係のない会話を多くした期間だった。もう3年も一緒にいるのに、この2ヶ月で互いに初めて知り得たものは多い。
「このためだけに待っていたのか?」
「え?」
今度は堂上が見つめ返す番だった。
「そうです・・・けど」
「けど?」
報告書は書類の山の1番上に乗せておけば、戻ってきた堂上の目に最初に止まるのだから直接手渡す手間は必要ない。それでもそうしたかったのは。
「教官、疲れてそうだったな と思って」
武蔵野第二図書館に移動するために昼食もそこそこに出ていく堂上が 小さくため息をつくのが耳に入った。玄田隊長は(無理やり)退院して戻ってきてはいるが、業務の一部は未だ緒形副隊長が担っている。堂上が駆り出されることも多く、今日も緒形の代理だった。何かと面倒事を押し付ける隊長の元で鍛えられてはいるが疲れがないはずはない。それを表に出すタイプではないからこそ気になったのだ。
「だからってあたしが出来ることなんて特にないかもだけど、気にはなってて」
小牧も感じていたかもしれない。でもその役は郁に譲ってくれた。
「せめてお疲れ様って言いたかったんですけど、教官を探しているうちに見つけることだけが目的になっちゃった」
てへへと笑う郁だが「やっと会えた」と満面の笑みで迎えられた意味を、堂上がどう受けるかは考えていないようだ。

「あの設定は有効か?」
堂上は郁の腕を取るとやや強引に引っ張り、事務室内にある来客用ソファーの隅に座らせた。
「へ?」
そのまま堂上はソファーに寝転がり 状況の飲み込めていない郁の膝に頭を乗せた。
いわゆる膝枕の体勢。
堂上は肘掛に足を放り出すと、「10分貸せ」とだけ宣言して目を閉じた。
「ちょ、きょ、教官っ・・・・・・あの、あたしのじゃ硬いだけですよ」
困惑はしたが、拒否する考えには及ばなかった。もぞもぞと膝を揺する郁に「丁度いい」と言うと、体を横向けにしてすうっと寝てしまったではないか。

設定って何ですか?
思い当たるのは当麻のメガネを買いに行くのに偽装したバカップル。そこに思い至ると郁は両手で顔を覆った。落ち着け、落ち着くんだ。あたしに課せられたのは設定の遂行。必死に現状を受け入れるために感情を抑え込む。

覆った両手をやや下げて、思わず叫んでしまいそうになる口元だけを押さえて堂上の様子を確認した。
穏やかな呼吸に合わせて動く胸の上下。若干疲れの見える横顔には眉間のシワが刻まれているが、意外と長い睫毛が印象的だ。やがて、膝に伝わる堂上の体温に郁は落ち着きを覚えた。
可愛い。
この人は、恋人がいたらこんなふうに甘えるんだろうか。寝顔を覗き込むと欲が頭をもたげてくる。
触れたい。
湧き上がるのは愛しいと思う強い気持ち。「好き」という言葉のかわりに堂上の頬に指先を伸ばした。


ガチャ


事務室の戸が開いた。
目が合ったのは緒形副隊長。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
一瞬頭の中が真っ白になったが、カッと頬が熱くなり脳内が沸騰する。寝ている堂上の頭を落とすわけにいかずにあわあわと焦る郁を、緒形は手の平を見せて制した。そして忍び足で自席に歩み寄り、持ってきた書類に判だけ押すとまた忍び足で出口に向かった。そのまま退室すると思いきや、郁の方を振り向いて――親指をぐっと立てて2度頷いた。
誤解をされては堂上に悪いと郁はブンブンと首を横に振ったが、緒形は笑みを零してもう1度大きく頷いてから出ていってしまった。

違うしっ!
が、このシチュエーションを見られては説得力に欠ける。
逆に違わなければどれだけいいことか。しかし未だ決定的なことはないのだ。
伸ばしかけた指を握りこんで手を引っ込めると、大きく深呼吸した。

「10分経ちました!」
郁の声に堂上はガバリと起き上がった。と同時に膝に堂上の温もりが残ったまま郁は立ち上がった。
よほど深く眠ったのだろう、堂上は頭を振ってからキョトンと郁の背中を見た。
「ああ、そうか・・・スッキリした、ありがとう」
自分から仕掛けたクセに この状況を忘れるとは、どうしてくれよう。問いただしたい欲求に駆られたが、この短時間で堂上の陰りは一掃されたように見える。
であれば、役に立ったと言えよう。どうせ棚上げにした想いだ。たとえ恋人ごっこであろうと構わない。
「膝くらい・・・あたしのでよければいつでもお貸しします、よ?」
なんちゃって と笑い飛ばす郁の頭を、堂上は立ち上がってコツンと指先で叩いた。

久しぶりの2人だけの空間は、少し色付いているようだ。


間もなく当麻の裁判が始まる。


10:30  |  図書戦  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2017年04月11日(火) 15:38 |  | コメント編集

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