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2012'12.09 (Sun)

「色づく 蕾」

今日は子供達それぞれに予定がたっていて、マネージャーの如くてんてこ舞いだった英香です。
お話も切れ切れに考えちゃって ちょっと悩んでしまいましたが更新です。上官・部下期 当麻事件中です。

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【More】

「色づく 蕾」


当麻の保護が続く中、漸く公休が復活した。
小牧が毬江に会う為に行動予定表に記入する。
「いいなぁ。」
郁の小さな呟きは しっかり上官達には聞こえていた。

小牧は帰り支度をして 座っている堂上に近づくと耳打ちする。
「何とかしてあげたら?。」
同じく公休なんだから。
堂上は姿勢を前に傾けた。半分だけ顔を向けると「うるさい」と 口だけ動かして答え、フイと書類に向かい直し無視を決め込む。小牧は軽く肩を竦めて お先にと出ていった。
堂上は背中越しに様子をうかがうと、郁は日報を書く手を止めて物思いに耽っていた。
こんなに待たせる気はなかった。さっさと仕切りなおして 郁に告白するつもりだった。上官だとか王子様とか関係なく 1人の男として、どんな光景も最後まで一緒に見ると言ってくれた女に。だからこそ 次の映画を匂わせたのだが。
フーッと息を吹く。
今は動くべきではない。この案件は 作家のそして図書隊の未来がかかっている。本を自由に読む権利は奪われてはいけないのだから。
優先順位はお互い分かっているからこそ、時折もどかしさを感じている。
「おい こら」
首を傾げ 青くなったり赤くなったりする郁の意識を戻してやる。慌てて日報を仕上げた郁を横に立たせたまま チェックする振りをして、明日どうしたものかと思案しながら判を押す。
「お先に失礼します!」
「おう、上がれ。」
郁がドアを閉めるタイミングで 堂上が呟いた。
「次は…当分先になりそうだな……。」
今動けば止められない。

郁の足音が聞こえなくなると、堂上は帰り支度をして庁舎を出た。暦の上では春だというが 暖かいのは日中の数時間。それでも柔らかな陽射しを受けて 桜の蕾が色づき始めている。その枝の向こう、少し植え込みに入ったところに見知った人影。凛とした背中は変わらない。
「笠原。」
迷わず声をかける。
「教官!。」
堂上は郁の隣に立ち、同じように桜の木を見上げた。
「まだ固そうだな。」
「はい。図書館横の桃の花は早くから咲いてますけどね。桜はまだまだ…。」
郁は堂上の横顔をじっと見る。
あたしの恋もまだまだか。でも教官、好きでいていいですか?。あたしに望みはありますか?。…いつか好きって言ってもいいですか?。
堂上が郁を見ると、バチッと目が合う。

堂上がゆらりと揺れた気がした。郁が一歩後ろに引くと 踵が木の根にかかり、たたらを踏む。尻餅をつくかと思われた郁の腕を堂上が掴むと、ぐいっと引いて体勢を立て直して腕の中へ。

暫く時間が止まったようだった。

膝を折った態の郁を抱き締める堂上。郁の耳を掠める吐息は熱い。2人の体温が馴染むほど 動かない。動けない。
堂上は 静かに郁の肩を掴んで体を離すと郁の目をのぞき見る。徐々に縮まる距離に 郁はギュッと目を閉じた。

「おい、あそこ。」
「ふえ?。」
堂上の指差す先には 他とは色づきの違う1つの蕾。濃いピンク色に見える蕾は、自己主張するように風に揺れる枝にあった。
「珍しいですね。」
盛大に勘違いしちゃったと、堂上から顔を背けて蕾を見やる。んなわけないじゃん と耳が真っ赤だ。
「もう少し待て。」
堂上は郁の背中に言葉を投げた。郁は背を向けたまま目を見張る。
「…すぐに咲くさ。」
ああ、桜の事か と納得する。
「そうですね。お花見 出来るといいなぁ~。」
郁は両手を広げて天を仰ぐ。郁のまわりには満開の桜が見えるようだった。満開の笑顔のような。
作家の 図書隊の 本の―― そして自分達の未来にかけて共に守りぬく。固い絆を信じるのが 今するべき事だと自分に言い聞かせる。
堂上は 郁の笑顔に笑顔でかえした。
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