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2012'12.15 (Sat)

「思い出の中で」前編

結局寝るまで落ち着かなかった 英香です。
明日学校休みだし父ちゃんいないし(出張)って、だらけた休日前夜を過ごしました。
そしてまとまらなかったので分けて更新です。まずはオリキャラ中心になっちゃいました。

↓こちらから どうぞ


【More】

「思い出の中で」前編


久しぶりに武蔵野第一図書館に足を向けた。
大学生になった真紀が5年前に引っ越すまでは、毎週のように通っていた図書館である。当時中学生だった真紀は、部活のない学校帰りには必ず寄って本を借りていたのだ。
「懐かしいな。」
下宿先は程近い。また本を借り始めようかな、とぐるりと館内を廻る。
じゃあ今日は児童文学でも読もうかと 真紀は閲覧室に入った。子供向けといっても十分大人にも読み応えがある絵本や童話も多い。大学生になって改めて読んでみると また違った解釈も出来て面白い。
選んでいるとある光景が思い出された。
この閲覧室で たくさんの子供に埋もれながら読み聞かせをしていた図書隊員。決して上手くはない。しかし子供に媚を売らない その読み聞かせは、初めはせがんだ男の子だけだったのが自然に子供達が寄って来たのだ。真紀もその声が心地よかった。そして 読み終えた後に覗かせた微かな笑顔が眩しかった。
あの図書隊員はどうしてるのかな。
ちょっと小柄な男性だったが カウンターの中の他の館員とは雰囲気が違った。いつだったか 置き引き犯を捕まえた場面に出くわした時に、実は特殊部隊の人だと聞いて納得した。読み聞かせはあの1回しか見てはいないが、優しい人なんだろうな と思った。普段は仏頂面が多かったみたいだけど。
真紀が手に取ったのは あの時図書隊員が読み聞かせをしていた絵本だ。
「借りていこう。」
胸に抱いてカウンターに向かうと、前方から歩いて来る1組の男女が目に入った。男性の方を見てドキンとする。
あの人だ。
5年経って更に精悍になった図書隊員。名前は――。
「堂上教官!。」
隣を歩いていた女性が鋭く放つ声に 堂上が頷く。
真紀は突然後方から走って来た男に突き飛ばされてよろめき、駆け寄った堂上に支えられた。
「郁!」
方向を変えて逃げる男に女性が難なく追い付き、あの時置き引き犯を捕まえた堂上の様に 綺麗な放物線を描いて男を投げ飛ばした。「確保!」
先から追いかけて来た他隊員に男を受け渡すと、女性は真紀に声をかけてきた。
「お怪我はありませんか?。」
堂上より背の高いその女性に 真紀は頷いて応えた。良かった と笑んだ顔は花が咲くようで綺麗だった。

突き飛ばされ時に落とした絵本を拾い上げた堂上は、本に傷みがないか検分してから真紀に差し出した。
「巻き込んでしまい 申し訳ありませんでした。」
堂上の声に真紀の胸が高鳴った。
「いえ…。」引っ越して5年、1度も会っていない。ましてや まだ子供だった自分を覚えてはいないだろう。でも今から始まるのも悪くない。「あの――」
「堂上教官。読み聞かせ会は予定通り行われるそうです。」
インカムで聞いた内容を女性隊員が報告した。
「了解。――では我々は警備があるので失礼します。」
堂上はその女性隊員を促して 閲覧室に向かった。
壁紙に『読み聞かせ』の案内がある。真紀はガラス越しに参加することにした。

数組の親子に囲まれて 2人の女性館員が読み聞かせを始めた。くるくる変わる表情、聞くのに邪魔にならない程度の手振りを加え 子供達を物語に引き込む。その見事な手法に子供達は夢中だ。
真紀は図書館員になるのが夢だ。大好きな本に囲まれて こんな風に読み聞かせをしてあげたい。子供達に色んな世界を伝えたい。そして。
あの堂上という図書隊員の近くに行きたい。
警備を続ける堂上の横顔に真紀は決心し、ぎゅっと胸に抱いた絵本に力をこめた。

08:55  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2013年10月07日(月) 17:52 |  | コメント編集

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